橘:預金や投資信託などは金額を把握することは難しくありませんが、不動産の評価額を算出するのは、少しハードルが高いかもしれません。多少なりとも費用が発生しても、現状分析と問題点の把握については、各専門家に依頼することをオススメします。円満相続実現の大きな一歩につながります。

――なるほど!

秘訣③ 秘密を作らない

橘:最後は「③相続人の間での秘密は極力避ける」です。よくあるケースとして「あなたに生前贈与をするけど、他の兄弟に言うと喧嘩になるから秘密にしておきなさい」と、他の相続人には秘密で生前贈与をする方がいます。他にも、特定の相続人を生命保険の受取人に指定し、そのことを他の相続人に秘密にしていることもあります。

――「言わなきゃバレない」と思っている人が多そうですね。

橘:後々になって発覚することがよくあります。特に、相続税の申告が必要になる方の場合、発覚する可能性は格段にあがります。相続税の申告書には、相続が発生する前3年以内に行われた生前贈与や、生命保険金の受取人とその金額をすべて記載しなければいけません。こういったことを知らずに、相続人間で生前贈与や生命保険の存在を秘密にしておくと、実際に相続が発生してから発覚してしまうのです。

――これは隠せませんね、、、。

橘:もし、特定の相続人に生前贈与などをするのであれば、先に紹介した家族会議の場で伝えておくことをオススメします。もしも、そのことに異を唱える家族が現れたとしても、相続が発生する前に問題が表面化できたことをプラスと捉えるべきです。

――それはなぜですか?

橘:相続発生後に問題が表面化するよりも、相続発生前のほうが、親の考えをしっかりと共有できる分、解決は容易だからです。いずれにしても、相続人間の秘密は極力避け、透明性の高い相続対策を目指していくことが理想ですね。

――ありがとうございました!

【大好評連載】
第1回 税務署が許さない「悪意ある納税者」とは?
第2回 税務調査は「白旗」を揚げたほうがトク!? タイミングと伝え方を徹底解説!
第3回 遺言書は2通作ってもいい、「合法的」相続ノウハウとは?
第4回 遺産分割の失敗例、相続は「税金」だけで考えると損します!
第5回 相続というニッチジャンルで「人気YouTuber」になれた理由

実家の相続、「預金いくらあるの?」とは聞けない。どうする?橘 慶太(たちばな・けいた)
税理士。円満相続税理士法人代表
中学・高校とバンド活動に明け暮れ、大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(「資格の大原」主催の法人税法の公開模試では全国1位)。大学卒業前から国内最大手の税理士法人山田&パートナーズに正社員として入社する。税理士法人山田&パートナーズでは相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手がけた相続税申告(相続手続)は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算500件以上。相続税の相談実績は5000人を超える。また、全国の銀行や証券会社を中心に通算500回以上の相続税セミナーの講師を務める。2017年1月に独立開業。現在、東京・大阪の2拠点で相続専門税理士が多数在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。「最高の相続税対策は、円満な家族関係を構築すること」をモットーに、依頼者に徹底的に寄り添い、円満相続実現のために日々尽力する。週刊東洋経済や女性自身、日本経済新聞、朝日新聞など、さまざまなメディアから取材を受けている。限られた人にしか伝えることができないセミナーよりも、より多くの人に相続の知識を広めたいという想いから、2018年にYouTubeを始める。自身が運営する【円満相続ちゃんねる】は、わかりやすさを追求しつつも、伝えるべき相続の勘所をあますところなく伝えていると評判になり、チャンネル登録者は6万9000人を超えている。2020年に刊行した初著書『ぶっちゃけ相続』は4万6000部を突破するベストセラーとなった。
実家の相続、「預金いくらあるの?」とは聞けない。どうする?