「2021年の国際政治リスク」でビジネスパーソンが最も注目すべきこととは写真はイメージです Photo:PIXTA

バイデン政権の発足で高まった
人権デューデリジェンスへの関心

 今年も大みそかが近づいてきた。さて、今年1年の国際政治を眺めると、バイデン政権の誕生、アフガニスタンにおけるタリバンの実権奪還、ミャンマーでのクーデター、欧州と中国との対立激化など多くの出来事があった。

 どれも重要なトピックであり、来年もそれぞれの動向が大きく変化するであろう。そのような中、今年の国際政治は海外に展開する日本企業には具体的にどのような影響を与えたのだろうか。

 本稿では、国際政治や安全保障の研究に従事する一方、企業の海外危機管理対応に従事する筆者が実務の中で感じたことを以下簡単に述べてみたい。

 国際政治の出来事といっても、企業によって重視するイシューや地域は異なり、実際、経営や危機管理対応に当たる企業担当者によっても関心ごとは大きく異なる。それは、企業向けにコンサルティングやセミナーを行う筆者として強く肌で感じるところだ。

 しかし、そのような中でも、全体的には以下のような出来事に企業は具体的に直面し、関心が強かったように思う。

 まず、「企業が経済活動を行う中で、取引先や社内における人権侵害リスクを把握・理解し、その軽減や予防に努める」とする「人権デューデリジェンス」を巡る動きだ。

 人権問題を重視するバイデン政権が今年発足したことで、米国は米中関係において新疆ウイグルの人権問題を前面に出すようになった。それによって、バイデン政権は人権侵害が疑われる関係者や企業への経済的な制裁対象の範囲を拡大している。

 そして、欧米企業の間では人権デューデリジェンスの意識が強まった。