経営者や著名人に圧倒的な信頼を得るインタビュアーの宮本恵理子さん。一瞬で相手の心をほぐし、信頼を得る宮本さんの聞く技術についてまとめた新刊『行列のできるインタビュアーの聞く技術 相手の心をほぐすヒント88』では、相手の心に寄り添い、魅力を良さを引き出す宮本さん独自の技術をふんだんに盛り込みました。今回は、宮本さんが業界のキーパーソンと「聞く技術」をテーマに語り合ったオンラインイベント「聞く技術フェスティバル」の内容を紹介します。聞くフェス1回目のゲストにお招きしたのが、宮本さんがエクゼクティブ・ライターを務めるPIVOT株式会社の創業メンバーであるCEO(最高経営責任者)の佐々木紀彦氏とチーフSDGsエディターの竹下隆一郎氏。ジャーナリストとして活躍する3人が、三者三様の「聞く技術」について語り合った。(構成/関戸大)
■鼎談1回目▶「「聞く」は最強のアンチエイジング!聞く技術が高ければ人は老けない」
■鼎談2回目▶「ひろゆきに学ぶ議論を深める「問う技術」」
宮本恵理子さん(以下、宮本) 誰もが聞き手になれるから、「誰が聞くか」が大切なのかもしれませんね。
佐々木紀彦さん(以下、佐々木) 「書く」技術はブログとかいろいろ出てきてオープン化されていきました。けれどこれまで、「聞く」技術は意外とオープン化されていなかったのかもしれません。
宮本 そうなんです。だからがんばって本にしました(笑)。「聞く」技術というと、「あの人だからできるんだ」と属人的なスキルだと考える人もいます。だから、どこまで再現性のあるスキルに抽出できるかという挑戦でした。
竹下隆一郎さん(以下、竹下) 確かに難しそうですね。ある程度は一般化できると思いますが、最後はその瞬間の相手との関係性によるはずです。
例えばICレコーダーを宮本さんの目の前に置いて、「一人で勝手にしゃべってください」といってもインタビューはできるのかもしれません。けれど、僕が聞き手として目の前にいるだけでも、宮本さんが話す内容は変わってくるはずです。僕が同僚として聞くことで、普段のインタビューでは出ないような話を語ってくれるかもしれないし。
同じように、最近独立して、自分で会社を経営するようになった佐々木さんが起業家にインタビューをしたら、話し手はこれからは本気で答えると思うんです。今の佐々木さんが聞いたら、インタビューを受ける経営者の回答も変わるでしょうね。
そういう意味では、インタビューは生モノで、再現できるものではないんだと思います。もちろん再現できる部分もあるのだろうけれど、最後の最後は、「聞く」側が何を背負ってい聞きにきているかが大事な気がします。
佐々木 会話も同じですよね。同じことを聞かれても、相手によって答えは変わっていきますから。正解がある話は同じ答えになるかもしれませんが、正解がないような対話は、まったく変わっていくでしょうね。
宮本 そして、正解がない対話の方が絶対におもしろい。
佐々木 つまり「聞く」技術を磨くには、根源的には自分の実力とか、人徳とかを磨かなきゃいけないですね。
そういう意味ではトークショーが日本に必要なのかもしれません。米国ではトークショーの会場に1000人ぐらいの観客が集まって、みんなで聞き手と話し手の対話を楽しむ文化があります。日本の場合、講演やパネルディスカッションはありますが、対話をエンターテイメントとして楽しむ機会がありません。
「聞く」技術、「問う」技術を味わう場があれば、もっと多くの人がそれをお手本にして、両方の技術を身につけられると思うんです。
竹下 PIVOTでやりたいですね。
佐々木 PIVOTのコンテンツを観た人が、「この聞き手は良いことを引き出すな」とか、「聞く技術のある人が集まっているな」「聞くことってこんなにクリエイティブなんだ」と感じてもらえたらうれしいですよね。PIVOTが「聞く」ことのプロ集団になるといい。
宮本 自分たちでハードルを上げてしまいましたが、そう言える技術を磨き続けないといけませんね。
佐々木 たくさんの人が、自分とは異なる意見をしっかりと聞けるようになれば、今、社会を覆っているような分断もなくなるかもしれません。すべてなくなりはしなくても、分断が薄まっていく可能性はあると思っています。
そう考えると、いろいろな社会課題を解決するのが「聞く」技術なのかもしれません。だからこそ僕たちは、メディアを代表して「聞く」技術のお手本を示せる存在になりたいですね。