漆間社長の責任論が
強まる背景

 振り返れば、7月28日に開かれた漆間新社長の就任会見も大荒れだった。前任の杉山社長(当時)の突然の辞任を受けた取締役会が、外部人材を求めず内部昇格を選んだことへ批判的な質問が相次いだ。

 同席した指名委員会の藪中三十二社外取締役に対し、不正があった部署を担当していた漆間社長を選任したことや、専務執行役で事実上のナンバー2を昇格させたこと、さらに選定過程に至るまで質問が繰り返された。

「出直しを期す新トップとしては不適任ではないか?」という直截な疑問もぶつけられた。藪中社外取締役は、外部からの疑念につながるリスクを議論したことを認めた上で、「結果で見ていただくしかない」とその場を収めた。

 報道でも、全体としては新社長のリーダーシップに期待する前向きな論調となったが、このやりとりにスペースを割いたメディアもあった。お手並み拝見的なスタンスが透けて見えた。

 中国の兵法書「三十六計」の中に「指桑罵槐(しそうばかい)」という言葉がある。ある人を非難しているように見せて実は遠回しに別の相手を非難することだ。

 三菱電機のケースでは、メディアは一見、漆間社長を批判しているようで、実は旧経営陣を責任追及のターゲットにしているようにみえる。

 実際、12月23日の会見でも、旧経営陣について「取締役会が独自に2016年より前にさかのぼって処分することが可能ではないか?」との質問が出た。柵山会長(当時)の前の経営トップであった山西健一郎氏の名前も挙がった。ガバナンス委の会見でも繰り返し質問があった。