「日本のニッチが世界のメジャーになる、新しい時代がやってきた!」
そう語るのは、世界中のVIPがいま押し寄せているWAGYUMAFIAの浜田寿人氏。浜田氏は、「ニッポンの和牛を世界へ!」をコンセプトに結成された「WAGYUMAFIA」を主宰。和牛の食材としての魅力を伝えるために世界100都市のワールドツアーを敢行。世界のトップシェフと日本の和牛を使ってDJのように独自の料理にしていくのが話題になり、全世界の名だたるVIPから指名される、トップレストランへと成長しています。「1個10万円のカツサンドが飛ぶように売れる」「デビッド・ベッカムなど世界の名だたるVIPから単独指名を受ける」、そんな秘密をはじめて公開して話題となっている著書『ウルトラ・ニッチ』の中から、本連載ではエッセンスをご紹介していきます。

なぜ日本のニッチが世界のメジャーになるのか?

日本のニッチが世界のメジャーになる

 本連載のタイトル「ウルトラ・ニッチ」から、どんな内容を想像されたでしょうか。

 同名の書『ウルトラ・ニッチ』は、「数ある日本の誇れる商品、食品、サービスを、小さく始めて、とことんニッチを攻めていけば、日本を飛び越えて世界でも十分勝つことができる」ことを伝えたくて、書いた本です。

 そんなバカな! そんな簡単にうまくいくわけがない! たまたま、うまくいったんじゃないの? そう思われるかもしれません。

 なかなか競合他社との差別化ができなくて、低価格戦略で薄利多売になり利益が上がらず苦労されたり、ニッチに振り切れていない方もきっといらっしゃるでしょう。

考え方を変えれば、十分に世界に通用するニッチに出会える

 でも、そんな頑張られてきたあなたにこそ、「考え方を変えれば、十分に世界に通用するニッチに出会えること」を伝えたいと思います。

 和牛というニッチに出会ったことで、世界にチャレンジするチャンスを手に入れられた、そんな経験をしてきた自分だからこそ、自信を持って「あなたのまわりにはきっと世界で通用するウルトラ・ニッチがまだ眠っている!」と、断言できるからです。

「日本のニッチが世界のメジャーになる、新しい時代がやってきた!」のです。

和牛のポテンシャルに気づき、世界に向けてビジネスを展開しようと考えた

 自己紹介が遅れました。

 WAGYUMAFIA(ワギュウマフィア)をご存じでしょうか。日本の和牛を世界に広めるべく、僕がスタートさせたプロジェクト、会社、そして店舗です。

「いってらっしゃい!」

 という掛け声とともに、いかつい顔をした僕と共同創業者の堀江貴文が黒いまな板に和牛を載せ、お客さまに向かうパフォーマンスを写真でご覧になったことがある方もおられるかもしれません。

 世界では「WAGYU」は、超高級牛肉として知られています。この和牛のポテンシャルに気づき、世界に向けてビジネスを展開しようと考えたのが、2013年でした。

 これまで、東京・西麻布と赤坂、「WM BY WAGYUMAFIA」「WAGYUMAFIA THE BUTCHER’S KITCHEN」という2つのフラッグシップレストランを展開し、世界中からお客さまをお迎えしてきました。

 その他、世界で最も高いカツサンドを提供する和牛カツサンド専門店「WAGYUMAFIA THE CUTLET SANDWICH」を東京・中目黒に、一杯1万円のラーメンを提供する「MASHI NO MASHI TOKYO」を東京・六本木に作りました。こちらも、世界中の方が訪れ、SNSで発信してくださっています。

 さらに東京・表参道に「YAKINIKUMAFIA」が2020年1月オープン、いずれも、神戸ビーフ、尾崎牛という日本で最高級の和牛を使った料理を提供しています。

 すでに海外展開もしています。香港に出店したのは、2018年11月。冒頭の「いってらっしゃい!」もその一部ですが、WAGYUMAFIAの一部店舗では、おいしさだけでなくエンターテインメントも強く意識し、ショー的な要素も取り入れています。その上で、最高級の和牛料理を食べてもらう。これが、とりわけインバウンドの外国人から高い評価を得たのでした。

 香港の店舗では、この形態をそのまま持っていき、大ブレイクしました。さらに、現地のパートナーと和牛を使ったラーメン店「MASHI NO MASHI HONG KONG」を開店。2020年5月には「YAKINIKUMAFIA HONG KONG」、2022年10月には「YATCHBAR HONG KONG」、2022年11月には「MASHI NO MASHI CENTRAL」も香港にオープンし、現在5店舗展開となっています(全世界では25店舗)。

世界100都市以上で行った「WAGYUMAFIA WORLD TOUR」

 そして、こうした店舗展開を行っていく間、僕が行っていたのが、「WAGYUMAFIA WORLD TOUR」でした。世界中のさまざまな都市に出向き、地元の著名レストランやシェフと一緒にポップアップイベントを通じて、最高級和牛を現地の料理や食材も交えながら食べてもらう、というツアーです。

 これが次第に料理関係者の間で話題となり、僕の和牛のシェフとしての知名度も上がっていきました。やがて、世界のトップシェフたちと一緒にコラボレーションする機会も増えました。すでに世界100都市以上でのツアー開催を成功させています。

 このワールドツアーの様子や、日本国内のWAGYUMAFIAの活動は、すべてインスタグラムを通じて世界に発信しています。僕のインスタグラムのフォロワー数は、現在24万人を超えていますが、これを見た外国人たちが、次々に日本のWAGYUMAFIAを訪れるようになったのです。

 そのつながりから、元イングランドのサッカー代表、デビッド・ベッカムとご縁が生まれて家族の誕生日パーティにシェフとして招かれたり、中東の某国の国王やロイヤルファミリーから「和牛料理を作ってほしい」と依頼がやってきたり、ラスベガスのMGMのシェフのメインショーに出演したりしました。ミラノコレクションのメインイベントとして行われたモンクレールの70周年記念ディナーのヘッドシェフを担当したりと、僕自身、想像もつかなかったような日々を過ごすことになりました。

ワールドツアーをやっているのは、最高級和牛の生産者たちの市場を広げていくため

 WAGYUMAFIAは今後、世界10都市での店舗展開を構想しています。ワールドツアーを回りながら、現地の感触と可能性を考えた上で出店を決めた10都市です。すでに新しい都市としてサウジアラビアのリヤド、ジェッダがオープンし、ラスベガス、ロンドンでの展開のための準備が進んでいます。また、ワールドツアーは、世界中からぜひ来てほしいという声をたくさんもらっています。

 インバウンド需要を中心とした国内、さらには国際的な店舗展開、そしてワールドツアーを僕がやっている目的は、ひとえに最高級和牛の生産者たちの市場を広げていくことです。

 神戸ビーフしかり、尾崎牛しかり、世界の食通たちも驚く、本当に素晴らしい和牛が日本にはあるのですが、世界における知名度はまだまだなのです。「WAGYU」「KOBE BEEF」という言葉は知っていても、本当の価値が伝えられていない。

 一方で、日本では和牛の市場はすでに飽和になっているといわれています。せっかく世界に誇れる最高級和牛があるのに、これではあまりにもったいない。これこそが、WAGYUMAFIAのビジネスを展開している僕の目的なのです。

 そしてこれが、予想をはるかに超える支持を得たのでした。世界中からお客さまが日本や香港に来てくださるだけでなく、最高級和牛を扱う僕に「和牛を料理してほしい」「コラボレーションをして自分たちのお客さまにも和牛をふるまいたい」「一緒にビジネスをやろう」などなど、世界のVIPから次々にお声がかかるようになっていったのです。

和牛ビジネスをスタートさせた頃、僕は文字通り、人生のどん底にいた

 しかし、この和牛ビジネスをスタートさせた頃、僕は文字通り、人生のどん底にいました。アメリカから帰国して、1997年に20歳で会社を作り、映画などのエンターテインメント関連、eコマースの事業を手がけていたのですが、2010年を過ぎた頃から厳しい状況にありました。

 やがて和牛のポテンシャルに気づき、すべての事業をやめて和牛のビジネスに賭けたいとメンバーに伝えると、その多くが僕のもとを去りました。そして僕は、たった一人、和牛ビジネスをスタートさせることになったのです。

世界で勝てる日本の食ビジネス、日本の商材は他にもたくさんあるのではないか

 たった一人、和牛という商材で世界に出て行って、実感したことがあります。それは、世界で勝てる日本の食ビジネス、日本の商材は他にもたくさんあるのではないか、ということです。

 日本の米はどうか。野菜は。果物は。調味料は。そして酒は……。改めて感じたのは、もっともっと日本は世界で戦えるはずだ、ということ。それをぜひ、知ってほしいと思うようになっていきました。

大きな組織を立ち上げることなく、たった一人でスタートできる

 しかも、僕が強調したいのは、大きな組織を立ち上げることなく、たった一人でスタートできる、ということです。何より、僕自身がそうだったから。これこそ、『ウルトラ・ニッチ』という本の中で書きたかった、僕の最大のメッセージです。

 今は昔に比べれば、起業の壁は低くなりました。巨額の資金を調達して、ビジネスをスタートさせるケースも増えてきています。しかし、僕がお勧めするのは、少し違います。数千万円、数億円ないとスタートできないビジネスやEXITありきの資本政策ではなく、小規模でスタートし、ニッチに世界を攻めていくこと。そういうグローバル展開の仕方があると、僕は気づいたのです。

 何億円も集め、何十人、何百人も集めて、システムを作って、大規模に世界に出て行くのではなく、小さく始めるグローバルビジネス。そんなビジネスがもっともっと日本にはあってもいい。それを、多くの人にぜひ知ってもらいたいのです。

突き抜けたブランドを片手に、直に世界に飛ぶことができる。一人でも始められる

 僕は和牛に出会って人生が変わりました。どん底だった状況から救われました。今、厳しい状況にある人、夢が持てない人、鬱々としている人、もっと何かワクワクできることを見つけたい人にも、ぜひ本連載を役立ててもらえたらと思います。

 突き抜けたブランドを片手に、直に世界に飛ぶことができるのです。一人でも始められるのです。世界という夢に向き合えるのです。そして、多くの人に、日本の人にも、世界の人にも、喜んでもらえる仕事ができるのです。

 これからの連載の中で、僕の経験が、少しでも日本のみなさんのために、日本のために役立つことができれば、と思っています。

(本原稿は、浜田寿人著ウルトラ・ニッチを抜粋、編集したものです)