グローバルに出て行くと、日本の歪みに気づける
福原 出井さんの話を聞かれた先生方が、どうしてグローバルに出て行かないといけないのかを、ようやくわかった気がすると言われていました。それまでは、英語を学ぶために行かないといけないと思っていたのだが、実はそうじゃないと。
出井 まったくその通りですね。産業革命の時代から情報革命の時代になって、今はその情報革命の次の時代が来ようとしている。でも、日本の教育は、いまだに産業革命時代の教育なんですよ。モノを大量生産するときに必要なことを教えている。和の重視、とか、チーム力、なんてものが今もキーワードになっている。
たしかにそれも大事ですし、日本らしさもある。でも、それだけではダメな時代になっているわけです。日本人が考える、良い子を揃えればいい、という時代ではもうない。なのに、工場要員として優秀な子どもたちを育てるような教育をいまも続けている。
世界は少しずつ変わってきたんですね。世界に出れば、それがわかります。極端な話をすれば、個人の力が要求されるようになっている。グローバルに出て行けば、日本の教育はちょっと違うんじゃないかな、と思わざるを得なくなるわけです。
福原 物事をリニアにしか考えられていない、ということですね。ずっと平行線のまま、時代は流れていると思い込んでしまっている。それこそ出井さんの会社の社名クオンタムリープ(量子的飛躍)ではありませんが、いきなり大きな変化がやってくることもあるわけですよね。
出井 日本人は当たり前のように大学進学を考えますが、それだって疑わなければいけない時代が来るかもしれない。それこそ、マイクロソフトのビル・ゲイツはハーバード大学を中退しているわけですよ。大学は卒業せずに、起業に向かうわけですね。
一方で、サンマイクロシステムズのスコット・マクニーリはちゃんと大学を出ていた。マクニーリはよく冗談で言っていました。「オレのコンプレックスは、大学を卒業してしまったことだ」と(笑)。ビル・ゲイツは中退して起業したのに、自分はのんびり大学に行ってしまったことが間違いだった、と。
これは冗談ですが、起業家の間では、こんなこともジョークになってしまうくらい、風土は変わっていた。でも、これもずいぶん前の話ですからね。