2030年以降は、相続難民が続出!?

相続難民、親のタワマンを相続した子どもが破産する時代がやってくる!?牧野知弘(まきの・ともひろ)
東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループなどを経て三井不動産に勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在はオラガ総研株式会社代表取締役としてホテルなどの不動産プロデュース業を展開。また全国渡り鳥生活倶楽部株式会社を設立。代表取締役を兼務。講演活動に加え多数の著書を執筆している。祥伝社新書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『不動産で知る日本のこれから』『不動産激変』『ここまで変わる! 家の買い方 街の選び方』などがある。

牧野 節税需要が盛り上がっているのは金融資産の多くが高齢者に偏っているからです。相続対策にはマンションを買うのが現状優れていて、特にタワーマンションなんかは時価と評価額の差額が大きいのでよく売れているのです。でも、相続を考えるほどのご高齢なので、そう遠くない先にお亡くなりになりますよね。2030年以降は相続難民がたくさん出てくるだろう、と僕は思っています。

 相続税対策用に買ったマンションやアパートを、上手に運用したり、売却して高く売り抜けられたりしたらセーフなのですが、資産価値が下がってしまうとローンが返せなくなってしまう。節税のために良かれと思ってやったことが、相続人は親が組んだ高額ローンの返済に悩んでしまう。相続のとき、ローンは消えませんからね。

 みんな投機でやっていて、売るときは皆さん一斉に売りに出すので資産価値が下がってしまう。せめて借金返済の分だけでも賃料が取れればいいのですが、前回お話したとおり現在の不動産マーケットは必ずしも実需と供給で成り立っていないので、賃料も下がってしまう。これは、悪いシナリオへいくと破綻しますよ。

日下部 なるほど、恐ろしいですね。あと実需の方でも、親子リレーローン破綻みたいなことを最近聞くようになってきましたね。

牧野 それも現実ですよね。

日下部 私の聞いた例ですと、親御さんが60代で住宅ローン審査が厳しかったので、お子さんと一緒に住宅を購入された方がいます。金利を固定10年にしていて、その期間が終わったあと毎月の返済額が2万円ほど上がることになってしまった。借り換えをしたくても、お子さん(女性)が結婚して育児に専念されているので、新たな住宅ローンを通すには審査力が無い。負担が増した毎月2万円を年金収入の中から捻出するのは本当に辛い、という方がいて印象的でした。