驚くほどリーズナブルに家を借りたり、
買ったりできる時代が目の前に!
住宅ジャーナリスト、マンショントレンド評論家
第1回マンション管理士・管理業務主任者試験に合格。不動産総合コンサルタント事務所「オフィス・日下部」代表。管理組合の相談や顧問業務、数多くの調査から既存マンションの実態に精通する。また、新築マンション情報など、マンショントレンドにも見識が深い。各種メディア、講演会・セミナーで活躍中。主な著書に『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)、『「負動産」マンションを「富動産」に変えるプロ技』(小学館)、『マンション管理・修繕・建替え大全 2021』(朝日新聞出版)ほか多数。
牧野 投機のマーケットで遊べる不動産と、日下部さんがおっしゃったように限りなく破綻していく不動産とに、今後は明確に分かれていくかもしれないですね。
日下部 それは、そうでしょうね。エリアに関係無くローン破綻が起きて、任意売却せざるを得ない。そうした家がたくさん出てきそうな気がしますね。
牧野 だから逆に、「驚くほどリーズナブルに家を借りたり、買ったりできるという時代が、僕たちのすぐ目の前に来ているな」とも考えられるんです。資産価値で儲けたい人たちには、儲けたいマーケットというのは常に存在します。
国民の二極化みたいな話ってよくありますけど、二極化・三極化と分かれていくそれぞれのカテゴリーに不動産マーケットがミートしていく時代も予測できますね。
日下部 特にコロナ禍のこの2年間は、台風の目のようなものがありましたよね。吹き飛ばされた人もいれば、思いっきりガンと上がった人もいる。株をやっていた人はほとんどが得をしただろうし、この差がすごくあるな、と。
牧野 僕らが冷静に見ないといけないのは、「給与所得者の平均給与(中央値)が433万円しかない国で、一般人は8000万円や9000万円のマンションが買えるわけがない。どう組んだって買えない。そういうマーケットになってしまっているのは、なぜなのか?」というところを、常に考えないと。
日下部 そうですね。
牧野 「マンションは一般庶民が買う重要な住宅インフラだよね」って、昔から広告やメディアの力を使って刷り込まれています。でも、僕が今見るマンションマーケットって、全然一般の人向けじゃないんです。お金持ちと税金を節約したい人と投資で遊びたい人っていう、このカテゴリーしかないんです。ということは、一般の方々向けに不動産を語ると言うと、今はあまりマンションマーケットって語れない。でも、逆にこのコロナ禍が幸いしてテレワークや在宅勤務が定着し、住む場所が広範囲に渡ってくると状況は変わる。
日下部 どういうことですか?
牧野 たとえば、JR東海道線本線に大磯(神奈川県・湘南地域)という駅があります。先日、大磯駅の周辺を見てまわったのですが、驚いたのは駅から徒歩圏内の中古戸建て、広さは100平米以内くらい、築25年から35年ほどのまだまだ十分使えるっていうお家は、だいたい2000万円台なんです。
僕は今、文京区と湘南の2拠点生活をしているからわかるんだけど、大磯って結構良いところなんです。JR東海道線に乗れば、1時間くらいで東京都心に行けるので。たとえば、リモートワークをしている方で海の近くで暮らしたい人にとっては、すごいお買い得に映る。そうするとあまり苦労しないでも買えるじゃないですか。2000万円だったら世帯年収が500万円くらいでも、そんなに無理はないので。こういうふうにマーケットがばらけてくると、それはそれで面白い時代になるのかな、と思っています。