「自分が誤ったリーダーシップに陥っている」と気づくために必要なことPhoto:photo AC

書籍『小さな資本で起業して10年経った経営者が考えてみた3つのこと』は、著者の紺乃一郎氏が会社経営を行うなかで考え、実践してきたアイデアを紹介する一冊だ。さまざまな読書の過程で出合った古今東西の偉大な先人たちの思考やアイデアをヒントに、「経営の原理原則」「リーダーシップ」「イノベーション」という3つの要素について語られている。小さな資本で起業し、悩みながらも会社を成長させ続けてきた著者が考える企業経営とは?

孫子のリーダー論 ~将に五危有り

 孫子は、現代の企業活動においても活用されています。

 経営者ではソフトバンク孫正義氏、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏、政治ではジョン・F・ケネディも読んでいたといわれています。積水化学工業の社名の「積水」も、孫子の一節、「勝者の民を戦わしむるや、積水を千仞の谿に決するがごときは、形なり」にちなんだものです。

 古くは軍師・黒田官兵衛、武田信玄、諸葛孔明、ナポレオンも読んでおり、三国志の曹操は孫子に注釈したものを配下の将軍に学ばせていました。

 これらのビッグネームに読み継がれていることからも、孫子は勝敗を決する戦略の書として有効かつ重みのある古典といえます。

 孫子九変篇には「将に五危有り」とあります。これは将軍には五つの危険がつきまとうという洞察であり、リーダー論を考えるうえで大変参考になるため、原文(書き下し)と現代語訳を紹介します。

〈原文(書き下し)〉故に将に五危あり。必死は殺され、必生は虜にされ、忿速は侮られ、廉潔は辱められ、愛民は煩さる。凡そ此の五つの者は将の過ちなり、用兵の災なり。軍を覆し将を殺すは、必ず五危を以てす。察せざるべからざるなり。

〈現代語訳〉そこで、将軍にとっては、五つの危険なことがある。決死の覚悟で〔かけ引きを知らないで〕いるのは殺され、生きることばかりを考えて〔勇気に欠けて〕いるのは捕虜にされ、気みじかで怒りっぽいのは侮られて計略におちいり、利欲がなくて清廉なのは恥ずかしめられて計略におちいり、兵士を愛するのは兵士の世話で苦労をさせられる。およそこれらの五つのことは、将軍としての過失であり、戦争をするうえで害になることである。軍隊を滅亡させて将軍を戦死させるのは、必ずこの五つの危険のどれかであるから、十分に注意しなければならない。(『新訂 孫子』岩波文庫、2000年)

自分の傾向に気づくことは難しい

 実際に自分の傾向に気づくことは大変難しいものです。

 このために歴史書やさまざまな書籍を学んだり経験したりするわけですが、参考として「自分が誤ったリーダーシップに陥っている」と気づくための一つのバロメーターを紹介します。

 それは「成果をあげているかいないか」を確認すること。その考え方と行動で「成果」があがらず「頭打ち」「天井感」が出ているならば、それは自分をイノベーションする時期だといえます。