今月から2023年卒業の学生らの就職活動が本格化した。コロナ禍でオンライン面接の機会が増え、選考フローも変化しているが、書類選考や面接を勝ち抜いて志望企業への内定を獲得するためには、「企業が応募者に求めていること」をきちんと理解しておくことが重要だ、という点に変わりはない。
そこでヒントになるのが、マッキンゼー・アンド・カンパニーの採用マネジャーを12年務めた伊賀泰代氏「いまの日本が必要としている人材像」を解説した『採用基準』(ダイヤモンド社)だ。
本稿では、企業の採用担当者が面接の時に重視するポイントを解説する。(執筆・構成/根本隼)

「面接官が採用したくなる学生」に共通する1つの特徴とは?Photo:Adobe Stock

3月から就職活動が本格化

 2023年卒業の学生らの就職活動は、例年通り今月から採用情報が解禁され、会社説明会や企業へのエントリーがスタートした。志望企業からの内定獲得を目指し、学生たちはエントリーシートの作成や、適性検査・採用面接の対策に忙しくなることだろう。

 コロナ禍で、企業の採用活動がどの程度活発に行われるか気になるところだが、リクルートワークス研究所が昨年12月に発表した採用見通し調査によると、2023年卒者の大学生・大学院生の採用数が前年と比べて「増える」と回答した企業は10.9%で、「減る」と回答した企業を7ポイント上回った。

 2022年卒の調査では「減る」が「増える」を3.9ポイント上回っていため、多くの業種で採用意欲が回復することが予想される。

一発勝負の面接対策には多くの学生が悩んでいる

 就職活動がひと段落するまで、学生は「志望企業の選考に通るか不安」「どこにも採用されなかったらどうしよう…」などと様々なプレッシャーにさらされ、ストレスを抱えることになる。いち早く内々定を手に入れた友人と自分を比較して、ネガティブな感情に陥ってしまう人もいるだろう。

 とりわけ、学生が不安を感じるのは企業との面接だ。ある程度時間をかけながらじっくりと考えて準備できる書類選考と違い、面接はリハーサルなしの一発勝負。どんな人が面接官なのか、何を聞かれるのかといったことは面接本番が始まるまで分からない。

 実際、就活生を対象にした「就活にまつわる悩み」に関するアンケート調査では、「面接を通過できるかどうか不安だ」という声が上位にランクインすることが多い。真面目な学生ほど、「どんな学生が評価されるのだろう」と頭が痛くなるほど考え、悩んでしまうに違いない。

企業が学生に「本当に求めていること」とは?

 それでは、企業が応募者に求めていることとは一体何だろうか?それを考えるうえでヒントになるのが、大手コンサルティングファーム・マッキンゼーの元採用マネジャー・伊賀泰代氏が、本当に優秀な人材の条件を語った『採用基準』(ダイヤモンド社刊)だ。

 本書は、マッキンゼーにだけあてはまる採用基準を語ったものではなく、伊賀氏が自身の長年の経験を基にして「これからの時代にビジネスの最前線で求められる資質」を詳しく解説した1冊。

 そのため、外資系コンサル企業への就職を考えている人だけでなく、就職・転職を考えているすべての人、企業の人事担当者や役員・経営者クラスのビジネスパーソンなど、さまざまな立場の人が読んでもそれぞれ学びが得られることだろう。

頭のよさよりも「リーダーになるポテンシャル」が重要

 本書によれば、多くの人はマッキンゼーが地頭や論理的思考力を採用基準にしていると思い込んでいるが、実際に求めているのは「将来のリーダーとなるポテンシャルをもっている人」。そして、そのような人こそ、マッキンゼーに限らずいまの日本に必要な人材そのものだという。

 仕事に限らずどんな場合であっても、周りを巻き込みながら現状を変えていくには、リーダーシップが必要不可欠。しかし、伊賀氏は、優れたリーダーを育成する制度や仕組みが日本に足りないために、リーダーの絶対数や若い世代が受けているリーダー教育の質・量が極めて低水準にあることを本書で指摘している。

 だからこそ、日本が抱える問題の多くを解決するためにも、本書でリーダーシップの重要性とその身につけ方を説くことを通じて、1人でも多くのリーダーが生まれることを期待しているのだ。

 次回以降の連載では、『採用基準』から内容の一部を抜粋・編集してご紹介していく。