プラスの感情で脳は動く

――これまでのお話から、勉強法や記憶術には脳のメカニズムが大きく作用することがわかりましたが、さらに知っておいたほうがいいことはありますか?

アウトプットで効果的な「脳が最大限に動く」方法山中恵美子(やまなか・えみこ)
株式会社瞬読 代表取締役社長
株式会社ワイイーエス 代表取締役社長
1971年生まれ、甲南大学法学部卒業。大学在学中に日本珠算連盟講師資格取得。卒業後、関西テレビ放送株式会社に勤務。2003年、そろばん塾を開校し、5教室でのべ2000人以上を指導。2009年、学習塾を開校。グループ30校舎で約2万人の生徒を送り出す。現在は、学習塾を経営する傍ら、子どもからビジネスパーソン、経営者、シニア層までに瞬読を伝え、分速38万字で読める人を出すなど、これまで1万人以上に指導している。また、「瞬読開始3ヵ月後の模試で国語の偏差値が49から64に!」「1ランク上の高校に合格できた」「3年間、歯が立たなかった中小企業診断士の資格が1年でとれた」「英検1級、2回連続で不合格。瞬読をつかって約半年で合格!」など、勉強で成果を出している人が続出。テレビ「教えてもらう前と後」(MBS/TBS系)や「おはよう朝日です」(ABC)、雑誌「女性自身」など、多数のメディアに登場。著書に、『1冊3分で読めて、99%忘れない読書術 瞬読』(SBクリエイティブ)、『たった1分見るだけで頭がよくなる瞬読式勉強法』(ダイヤモンド社)がある。

吉野 これは私の持論ですが、脳は「快」で動き出すと思っているんですね。「感情を拾う」ことが記憶力アップにもつながるとお話ししましたが、そのなかでも、プラスの感情で脳は動くし、逆に0.1%の不快で脳は止まるんです。

 たとえば、夜に爪を切って、ほんの少し深爪しただけで翌日1日中憂鬱になったり……。そんなささいなことで脳は止まるし、逆に、快感があれば止まらなくなる。「やった!」「できた!」と思ったり、人から褒められたりするのはすごくいいですね。

山中 「快」で動き出す、まさにその通りですね。人って、楽しいことしか続かない。つらいことはなかなか続かないですよね。だから嘘でもいいから、楽しいと思える努力をするのがいいと思うんです。

 私は、脳トレドリルをやるときに2人以上でやることをおすすめしているのですが、それは、2人以上でやると「笑う」から。楽しい空気の中でやるからいいんです。一人で時間を計りながら難しい顔をしてやっても、脳は刺激されないんですよ。そういう点でも、答えを出すためのドリルではないというのを、意識していただけたらと思いますね。

 答えは、検索したら全部出てきます。そこに意味があるのではなく、「脳を働かせる」「考える」ことに意味がある。その繰り返しで脳が鍛えられていくんです。

やり方さえ知っていれば天才になれる

吉野 私が浪人していたときの話なんですが、京都大学の医学部に、数学が得意な大先輩がいたんですね。どうしたら数学ができるようになるかを聞いたら、「歩いているときに向こうから来る車のナンバープレートを全部足していけ」と言われました。「4桁は大変だから1桁でいい。何台通り過ぎても間違ってもいいから、とにかく足し算をしなさい」と。そのように計算することを習慣にしていたら、私も暗算力、計算力がすごく上がりました。間違っていても脳を働かせると活性化するのは、こういうことなんだなと。

山中 母がそろばんの先生だったので、私は小さいときからそろばんをやっていました。暗算もやっていたのですが、母は私が間違っても褒めてくれたんですね。それが「快」の感情にもつながっていると思いますし、今から思えば、一瞬で判断して答えを出すことをこのときからやっていたんですね。まさに、自分の原体験になっているかもしれません。

吉野 学校で教えてくれない勉強法は、いっぱいあるんですよね。超進学校に行っている人たちは問題集の解き方から習うらしいですが、私たちはそれを知らなくて、ただやっているだけ。もちろん、生まれながらの天才もいるかもしれませんが、やり方さえ知ってしまえば、私たちにだってできるんですよ。そんな手品の種明かしのようなことをお伝えするのが私の役目だと思っていて、その一つが記憶術なんです。

 先ほどお話しした「覚えるときではなく、思い出すときに記憶する」も、学生時代の私は知らなかったから、単語を100回唱えていた。無駄なことをしていたなと、今頃になってわかるわけです。あなたの頭が悪いのではなく、単にやり方を知らなかっただけということを、皆さんにはぜひお伝えしたいですね。

山中 頭の良さって、地頭のいい悪いではありません。脳みその重さはみんなほとんど一緒。天才だけ重いわけではないですよね。それなのに、なんで頭のいい人とそうじゃない人がいるかというと、吉野さんのおっしゃるように使い方を知っているかどうかだけだと思うんですね。

 逆に言えば、ちょっとした気づきで誰でも天才になれるんです。脳トレも、そのきっかけの1つ。今この瞬間からやれば脳が衰えない。むしろ若返っていくので、ぜひ活用してください。