「自分との小さな約束」を守ることで自己肯定感は高まる

――ご著書のなかに、社員の方へのインタビューも収録されていますが、ほぼすべての方から「秋元さんはいつ寝ているんだろう」とか「無理しないでください」と書かれていたので、秋元さんの体調管理法が気になりました。

秋元 前は不安になったり、悩みがあったりして眠れないこともありました。寝るのが怖くて、寝落ちするギリギリまで仕事をする、といった感じです。

 しかし最近は6ー7時間は眠れるようになりました。年齢も会社のフェーズも変わって、「いかに起きてる時間に効率的に考える時間を増やせるか」という思考の質のほうが大切になってからは、睡眠の質に気を使うようにしたんです。

 他にも思考をリセットするために「いま思っていること」を定期的にノートに書き出しています。あと、運動もしています。いまはトライアスロンに挑戦しようとしてるんですけど、運動するようになってから、集中力が増して仕事の質はすごく上がりました。

――かなり体調は意識されているんですね

秋元 とくに意識しているのは、リズムを崩さないことです。「自分で決めた小さいルールをちゃんと毎日守る」ようにしています。

 私、もともと自己肯定感がすごく低いので、「自分ダメだ」とすぐ思っちゃうんですよ。

 でも悩んだときノートに書き出してみると、だいたいは「自分ではどうにもならないこと」なんです。

 どうにもならないことでモヤモヤしてしまうときも、自分との約束を守っていれば「私は今日も1日、ちゃんとやるべき約束を守ったからOK!」と肯定的になれます。寝る前に、そう考え直してから眠るケースも多いですね。

――「自分との約束」にはどういうものがあるんですか。

秋元 「朝起きて体重を測る」とか「お風呂につかる」とか本当に簡単なことから、「毎日英会話」とか「毎日トレーニング」とかストイックなものまで様々です。目標が高すぎると挫折しちゃうんで、ちょっとずつ増やしています。あとは毎日じゃなくて、「週に2回できればOK」とか幅をもたせることもあります。

モヤモヤしている「優等生」にインストールしてほしい

平尾 秋元さんの行動の源泉ってどういう欲求なんですか。「生産者さんを助けたい」という純粋な欲求なんですかね。

自己肯定感が低くて悩んでいる「優等生」ほど、成果を出せる理由平尾 丈(ひらお・じょう)
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。

秋元 そうですね。自己肯定感が低いからこそ、誰かに感謝されたいという思いが強いのかもしれません。だからこそ、自分にしかできないことをして「自分って、ここに居ていいんだ」と思いたい欲求が根本にある気がします。それが一次産業の領域で、「ここだったら自分が貢献できるかも」と思ってやっているんです。

平尾 自己肯定感を高めるために、起業家や著名人との交友関係を増やす人も多いんですけど、そこに流れないのがすごいと思います。秋元さんの抽象度のお話し前回記事)がすごく刺さったんですけど、一歩引いた所から俯瞰されていて、視座がすごく高いなと思いました。もう「別解」の枠には収まらないですね

秋元 いやいや、そんなこと無いです。この本は私みたいな人にぴったりだと思います。会社員時代の私もまさに悩んでいて、ずっと答えを探していました。

「優等生であればいい」と思って生きてきたけど、なんかモヤモヤしたり、大きな成果が出ていないことに劣等感をもったり、でもどうしたらいいかわからないとか。

 起業家は思考法が違っているだけで、それを自分にインストールすればいいだけです。私も根本の性格は会社員時代から変わっていないですが、思考法は大きく変化しています。優等生だからこそ、「起業家の思考法」もインストールできると思います。意識して思考を変えれば、行動も大きく変わるはずです。

平尾 ありがとうございます。「別解力」を多くの方に伝えていきたいと思います。

自己肯定感が低くて悩んでいる「優等生」ほど、成果を出せる理由