「世の中をあっと言わせる企画を作りたい」「自分の夢を仕事で実現させたい」「ユーザーの気持ちがわからない」「企画書が通らない」「プロジェクトを成功させる方法が知りたい」など商品開発や新規事業を生み出す上でのあらゆる悩みを解決!
本連載の著者は「千に三つ」や「一生涯一ヒット」と言われる食品(飲料)業界において「氷結」「スプリングバレーブルワリー」「淡麗」「キリンフリー」など数々のヒット商品を生み出してきた和田徹氏。実は入社から12年間、ヒット商品ゼロだったという著者なぜ、失敗だらけだった人が、ヒット商品を量産できるようになったのか? 売れ続ける商品づくりの全技法を明かしたのが『商品はつくるな 市場をつくれ』(3月15日刊行)という書籍です。刊行を記念し、本書の一部を特別に公開します。

チームの結束と士気、推進力が爆発的に上がる「魔法のひと言」のつくり方Photo: Adobe Stock

「氷結」チームをまとめたインナースローガン

インナースローガンとは、開発チームの意思をまとめ、ひとつの目的に向かうエネルギーを高める、内輪だけで共有するスローガンです。

「これだ!」というものがあると、チームの結束と士気、推進力が爆発的に加速します。

「氷結」のときは「フルーツ・キングダム(果物の王国)をつくっていこう」でした。

いまでは想像できないほど、当時のキリンはビール専門の巨大企業でした。なので、主力分野以外の商品市場に新規参入するのは、ただ単に「新ブランドを投入する」という簡単なことではありません。

組織やしくみの大部分は、ビールの生産に最適化されています。そのすき間を何とか間借りし、まったく違う分野の小さな商品をねじ込んでいくことになります。

当然、社内には、果汁やチューハイ、カクテルなど、ビール以外のアルコールについて知っている人がほとんどいませんでした。社内すべての部署が「ビール、ビール、ビール!」。社を挙げて「総合酒類メーカー」に変わろうとしていたものの、実際の社内は「総論賛成、各論反対」の有様。

先輩社員からの風当たりは強く、私たち総勢4名のチームは何度もくじけそうになりました。

リーダーである私もメンバーも、さまざまな会議で集中砲火を浴び、帰ってきました。よなよなミーティングルームに集合しては、その日の振り返りと課題の整理、今後の対応策を粛々と検討する日々を過ごしていたのです。

目指す方向を「言葉」にしよう

そのとき、私たちの目には、ビール一色で統一された会社が、軍隊組織のように映っていました。なんとなく思い浮かんだのは「麦の帝国」という言葉。

一糸乱れず行進していく勇壮で優秀な軍隊。命令系統や序列、ヒエラルキーが強固に築かれている世界。ピーンと糸が張りつめ、数ミリの遊びも隙間もない組織。映画「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーのテーマ……。

対して私たち。「氷結」の開発チームは、カジュアルに爽やかに楽しく笑っているイメージ。みんなで、世界一飲みやすくナチュラルな新しいアルコール飲料を楽しみながら……。

まるで果実の楽園、フルーツパラダイス。いや、王国?

そうだ、私たちは「フルーツ・キングダム」をつくるんだ!

童話や絵本でも、王様や貴族のテーブルの上には、色とりどりのフルーツが山盛りになっていました。