今後の成長が期待できる地域に投資し、その成長の果実を得る

 一方、年率5%以上の運用を目標とする「積極運用タイプのポートフォリオ」は、株式100%。内訳は「日本を含む先進国株式60%」「新興国株式40%」です。

 私がご提案するポートフォリオでは、国内資産よりも海外資産の割合を多くし、新興国の組入比率を高めています。海外資産の割合を多くしているのは、日本は今後も低成長が続きそうなことが理由です。

 先進国の中でも日本の経済成長率が低いことは、みなさんご承知の通りです。

 世界の企業を時価総額でランキングすると、上位をアップルやアルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、メタ(旧フェイスブック)、アマゾンといったアメリカの企業が占める一方で、日本国内の時価総額上位企業は、トヨタ自動車のような大手メーカーやNTTなどの通信会社、三菱UFJフィナンシャル・グループのような金融グループなどが中心であり、新たな成長産業を生み出せていないこともうかがえます。

 残念ですが、「今後の成長が期待できる地域に投資し、その成長の果実を得る」という観点では、日本への投資の割合は控えめにせざるを得ないのです。

 また、新興国の組入比率を高めにしているのは、長期運用をするなら今後大きく成長する地域にこそ積極的に投資していくべきだと考えるからです。一般にいわれるように、新興国への投資はリスクが大きいことは間違いありません。

 しかし、5年、10年、20年先を見据えて資産運用するのであれば、長い目で見て成長余力がより大きな地域への投資こそ、資産を守り育てることにつながります。新興国の成長ポテンシャルの高さを考えれば、ここに投資しない手はないでしょう。

朝倉智也(あさくら・ともや)
モーニングスター株式会社 代表取締役社長。
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。98年モーニングスター株式会社設立に参画し、2004年より現職。第三者投信評価機関の代表として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。
主な著書に、『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『つみたてNISAはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『iDeCoで自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。