投資家の世代交代が進んでいる

「そこまでわかっているのであれば、いけいけどんどんで株を買えばよかったじゃないか」と思う人は多いでしょう。

しかし、私たちプロの投資家には投資哲学があるのです。

投資哲学を持って運用しているファンドマネジャーは、自分の運用する資金を投資哲学と異なるところに大きく配分することはできません。市場の状況に応じ、一部なら投資哲学に反して振り向けることができるかもしれませんが、それでもせいぜい資金の10%程度でしょう。

こればかりは、「頭でわかっていても、無理」としか言えません。自分が10年、20年と信じてきた投資哲学を捨てることはできないのです。

一歩引いて分析すると、今回プロ投資家の中で起きたのは、リーマン・ショックを知っている投資家とリーマン・ショックを知らない若い世代の投資家の「年代別の二極化」かもしれません。

2000年代前半ごろまでは、リスクをとって「大勝ち」を狙うプロの投資家が多くいました。野球にたとえるなら「ホームラン、三振、三振、三振、ホームラン」といった打ち方です。「これこそ投資の醍醐味だ」と言われていました。

それが2008年のリーマン・ショック後は、リスクを抑えて安定的にヒットを重ねる、いわばイチローのような打率の高い打ち方が要求されるようになりました。つまり、運用の世界ではリーマン・ショックを機にリスク管理の方法が変わったわけです。

リーマン・ショックを生き抜いてきたプロ投資家は、このときの経験が骨身にしみています。しかし、気づけばリーマン・ショックから15年近くが経ち、投資の世界でもリーマン・ショックの後にでてきた若手が主流になりつつあります。

今回、コロナ禍の株式市場で起きたことは、プロ投資家の世代交代が進んでいることと切り離せないと思います。

(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)