12月に開かれた日銀の金融政策決定会合で、日銀はインフレ目標設定に前向きの姿勢を見せた。だが依然として、インフレ目標に対する反対論がくすぶっている。そこで2回にわたり「インフレ目標」に対する反論に反論したい。今回はインフレ目標無効論を検証する。

 筆者は10年ほど前、2003年3月にバーナンキ教授にチェックしてもらって「インフレ目標政策への批判に答える」というFAQを作った。

 これは今でも読めると思うが、若干の変化があるので、今回はその改訂版を書こう。

 インフレ目標は、日本以外の先進国で採用されている標準的な金融政策の枠組みである。ニュージーランド、カナダ、イギリス、スウェーデン、フィンランド、オーストラリア、スペイン、韓国、チェコ、ハンガリー等の国のほか、欧州通貨制度加盟国については、ECB(欧州中央銀行)がインフレ目標を採用しているため、全てがインフレ目標の採用国といえる。アメリカは事実上雇用とインフレの両方に対してFRB(米連邦準備理事会)が責任を負っているが、インフレ目標をかかげるとともに、その裏側にある失業率水準にも言及している。

 ところが、インフレ目標について、2012年12月の総選挙で大勝した安倍政権が公約にも掲げて実施しようとしているが、いまだに反対論がくすぶっている。かつて、筆者は10年ほど前に岩田規久男氏らとともに『まずデフレをとめよ』(日本経済新聞社 2003年2月)を書き、デフレの克服に有効であることを示した。同書では、大恐慌のリフレ政策にも言及しており、その主張は今でも変わりない。

 また、筆者は、『まずデフレをとめよ』で書いたことがその後日本の量的緩和、海外でのリーマンショック以降のデータでも妥当することを示すために、『日本経済のウソ』(筑摩書房 2010年8月)を書いた。詳しくは、両書を参考にしてもらいたい。