ベスト経済書・ビジネス書大賞2024#2

特集『ベスト経済書・ビジネス書大賞2024』(全7回)の#2ではランキング1位となった『財政規律とマクロ経済』の著者である齊藤誠・名古屋大学大学院経済研究科教授に、積極財政と量的緩和に関わらず低物価、低金利、低成長が続いた理由ととるべき財政政策のあり方を語ってもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

積極財政、量的緩和でも
低物価、低金利、低成長が続いた理由

 1990年代後半からの日本の財政金融政策は変則的なものでした。国債を大量に発行し財政出動を繰り返し、国債の半分前後を日本銀行が購入する。そのことで日銀の当座預金残高が増える、つまり大量にマネーを供給する。

【第1位】ベスト経済書・ビジネス書大賞2024!『財政規律とマクロ経済』著者が語る「今とるべき財政政策の道」齊藤 誠(さいとう・まこと)/1983年京都大学卒業、92年米マサチューセッツ工科大学経済学部博士課程修了(Ph.D.)。2019年より名古屋大学大学院経済学研究科教授

 しかし、物価は上昇せず、金利も低位で安定し、経済成長率も低く、GDP(国内総生産)ギャップもマイナスの状態が続いた点で変則的なのです。なぜ、こうなったのかを理論的に明らかにすることがこの本を書いた動機です。

齊藤氏は、変則的な状況になった理由を明らかにするために新しいモデルを作りました。次ページでは、モデルやその結果に戻づいて導き出された結果を語ります