久しぶりに聞かれた
中国政府筋の前向きなコメント

 先の総選挙での自民党圧勝を受け、12月26日、第2次安倍政権が発足した。3年3ヵ月振りの政権交代劇と安倍氏の復活劇を、中国はどのように受け止めているのだろうか。

 靖国参拝は辞さず、憲法改正を唱え、自衛隊を「国防軍」に昇格させようとする安倍新政権だが、中国では警戒感以上に、むしろ期待感の方が強いようだ。

 尖閣諸島の領有をめぐる問題では強硬姿勢を崩さない安倍新首相に警戒感を抱きつつも、中国では安倍氏の持つ“2つの顔”に注目している向きがある。安倍新政権を「選挙演説と実際の政策は異なる」と分析し、同時に中国側も関係改善を促すさまざまなシグナルを発信している。

 12月20日午後、東京都内で、新旧の駐中国大使の歓送迎会が開かれた。5日後の12月25日に北京に着任が決まっていた木寺昌人大使は「両国の戦略的互恵関係を深化させ、長続きする友好関係を培わなければならない」と述べる一方で、中国駐日大使館の程永華大使も次のように両国関係の改善を呼びかけ、上海の地元紙でも紹介された。

「中日両国は互いに重要な隣国で、政治、経済、文化など各領域で深い交流と協力関係が存在する。今年は中日国交正常化40周年、この間両国関係は日増しに緊密になり共同の利益はますます拡大している。二国間にはさまざまな問題はあるが、双方は共に大局を見、現実を直視し、中日の4つの政治文件(※注)の精神で適切に目前の問題解決に当たり、新たに正常な発展の軌道に乗せるべきだ」

 こうした前向きなコメントが報道されるのは、久しぶりのことだ。

(※注)「4つの政治文件」とは、〈中日両国関于恢復邦交正常化的聯合声明(日中共同声明、1972年)〉、〈中日和平友好条約(日中平和友好条約、1978年)〉、〈中日聯合声明(日中共同宣言1998年)〉の3つと〈中日関于全面推進戦略互恵関系的聯合声明(戦略的互恵関係2006年)〉を指す。