現在エジプトは人口が1億人を超えており、小麦需要は非常に大きくなっています。エジプトで有名な「コシャリ」などは小麦が原料の一つです。

 ロシアの穀物不作によって輸出量が減ると、ロシアの主要輸出先である北アフリカでは穀物価格の高騰を招きます。2010~12年にかけて発生した「アラブの春」は、ロシアを「震源地」とする穀物価格の上昇によってアラブ諸国民の不満が爆発して起こったともいわれています。

 食料価格の短期間での高騰は、発展途上国を中心に社会不安を引き起こす要因となり得るのです。「むき出しの導火線」は簡単に火が点きます。

 ウクライナは小麦だけでなく、世界的なトウモロコシ輸出国でもあり、小麦と共に貴重な外貨獲得手段となっています。またEU諸国への小麦輸出も盛んですが、やはり中心は北アフリカや中東諸国です。輸出拠点となる港は、オデッサなど複数の拠点港をもっています。

 こうして、ウクライナやロシアから積み出された小麦は、ボスポラス海峡とダーダネルス海峡を通って地中海へと出たあと、地中海沿岸諸国へと運ばれ、さらに紅海からインド洋へと出ていきます。

 ウクライナにとっても、ロシアにとっても、ひいてはルーマニアとブルガリアにとっても、黒海周辺の領土は輸出拠点として重要です。特にロシアの歴史は、不凍港を求めて領土拡大を目指した歴史でもあるので、黒海周辺領土の確保は最重要課題といえます。

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