ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。大人の教養として世界の国々を知ろうと思った時におすすめ1冊が、新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)だ。世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。本書から特別に一部を抜粋して紹介する。
バングラデシュってどんな国?
バングラデシュはベンガル湾に面する南アジアの国で、西側はインド、東側はミャンマーに接します。
ベンガル湾に注ぐガンジス川は、広大な河口デルタ(三角州)を形成しています。河口デルタは海抜が低いため、降水量が多い夏の雨季になると、洪水や高潮の被害を受けやすくなります。
二度の独立を果たしたベンガル人の国
国名がベンガル語で「ベンガル人の国」という意味のバングラデシュは、二度の独立を経て現在に至ります。
一度目は、1947年にインドがイギリスから独立する際に、ヒンドゥー教徒とムスリムとの対立が深まり、インドから分離してパキスタン・イスラーム共和国の東パキスタン州として発足しました。
二度目の独立は、1971年の西パキスタンからの独立です。西パキスタンの住民がパンジャブ人中心だったのに対して、東パキスタンは大多数がベンガル人で構成されていました。
一度目の独立以降、西パキスタンの経済的支配と西側に偏った政策に対する不満が高まり、ベンガル人の民族的アイデンティティを基盤に、バングラデシュの分離独立が結実しました。
アジア諸国からの投資でアパレル産業が発展
経済を支えているのが縫製産業です。2020年度の輸出品目のうち縫製品は実に85.6%を占めます。
流行のサイクルが短く、多品種少量生産体制が求められるアパレル産業は、本来的に労働集約的な産業体質を有しています。
中国の約5分の1という賃金水準のバングラデシュには、1970年代から韓国や香港からの投資が進み、縫製品の輸出は1990年代には50%を占めるまでに至りました。
近年では、人件費が高騰する中国の代替縫製基地として日本企業の進出も相次いでいます。
バングラデシュ人民共和国
面積:14.8万㎢ 首都:ダッカ
人口:1億6409.9万 通貨:タカ
言語:ベンガル語(公用語)、英語
宗教:イスラーム89.1%、ヒンドゥー教10%
隣接:インド、ミャンマー
(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIAのThe World Factbook(2022年2月時点)を参照
(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)