どうして君はマズイのか?
「皆と同じ」で安心する学生たちへ

このコロナ禍では、誰も経験のないことが連続して起こりました。様々な状況で変化を余儀なくされたし、上手く対応した人も難しかった人もいます。そうした中で、若者の柔軟さは頼もしいものです。そのことを大人がきちんと認識して、彼らに任せる勇気があってもよいと思います。自分を超える人材を育てるチャンスですから。

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 一方で、若い人たちも自信をもって行動してほしい。彼らが自信を持てるかは、そもそも挑戦できるかどうかにかかっています。できるだけ早い時期から自立を促し、失敗を恐れずチャレンジできるように導きたいですね。

「同級生を見て、皆と同じであることによって、安心する気持ちがあると思います。ですが、その気持ちが強い人はまずいと思ってください」

 これは、私がよく学生に話す言葉です。なぜ、これがまずいのか。就活の際などは典型的ですが、他者と差別化し、自分の特徴を客観的に分析してアピールしながら「自分じゃないといけない理由」を説明していきます。大人でも難しいことですよね。しかしながら、この差別化された自分ならではの強みが意識できていないと、これからの社会で必要とされることは難しいと思います。

 極端な言い方に聞こえるかもしれませんが、「皆と同じだから安心」という感覚は、一刻も早く取っ払った方がいい。今の大学生にもこれが染み付いているのです。だから、たくさん失敗を経験して、それを糧に成功体験を得ることで、自信を持てるような環境を整えていきたい。我々世代が常識だと思っていた上位下達の指導ではなく、何事も自立して実践できるように、共に成長することを意識してほしい。

 そのためには、小中学生に教える先生、若いお父さんやお母さんといった方々が、今までの常識を疑った上で学び続ける必要があります。若者の将来に関わる立場の方々には、適度な自信と共に、自分に期待するからこその謙虚な姿勢が備わっているといいと思います。

中村聡宏(なかむら・あきひろ)/一般社団法人日本スポーツマンシップ協会代表理事。千葉商科大学サービス創造学部准教授。1973年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。印刷会社に入社し、スポーツポータルサイト『スポーツナビ』立ち上げのプロジェクトに関わるなど、広告、出版、印刷、ウェブ、イベントなど多分野の企画・制作・編集・運営等業務に従事。独立行政法人経済産業研究所では広瀬一郎上席研究員とともに、サッカーワールドカップ開催都市事後調査、「Jリーグ発足時の制度設計」調査研究プロジェクトなどに参画。また、スポーツビジネス界の人材開発育成を目的としたスポーツマネジメントスクール(SMS)を企画・運営、東京大学を皮切りに全国展開。2015年千葉商科大学サービス創造学部専任講師に就任。21年より准教授。18年一般社団法人日本スポーツマンシップ協会を発足し、代表理事に就任するなど、スポーツマンシップ教育を展開する。著書に『スポーツマンシップバイブル』(東洋館出版社)