保有期間が20年になると、リターンのばらつきが少なくなる

 最後の図にある2つのグラフを比較してみてください。これは金融庁が作成したデータです。

 いずれも1985年以降の各年に、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券という4つの資産に同額ずつ毎月積立投資をして、片や5年間、もう一方は20年間、保有し続けた場合の年率のリターンを示しています。

 両者を比べるとよくわかるのですが、保有期間が5年だとリターンにかなりのばらつきがあります。しかも、マイナスリターン、つまり元本割れになるケースも散見されます。

 ところが、保有期間が20年になると、リターンのばらつきが少なくなることに気付かれるでしょう。保有期間20年のリターンは、年率で2~4%が40%程度、4~6%が50%程度、6~8%が10%弱という水準に収斂しています。

 しかも、元本を割り込んだケースが一度もありません。

 金融庁はこういったデータをもとに、20年は続けられる制度を作ろうとしたのではないでしょうか。

 2022年の口座で毎月3万3000円ずつ、12カ月にわたって積み立て、それを20年間保有する。翌年、2023年の口座でも、毎月3万3000円ずつ、12カ月にわたって積み立て、それを20年間保有する。その繰り返しを2042年まで続けていけば、適正な商品選択と将来のマーケット動向にもよりますが、大体その期待されるリターンは、2~8%に収斂する可能性が高いと想定できるのです(下図)。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。
つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言。国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、
個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を9年連続受賞。
口座開設数16万人、預かり資産5000億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)他多数。