壁を感じるまでもなく、弾けるようになる

――ピアノを初めてやる人にとっては「『楽しく、弾けるようになる』前に、壁にぶち当たるんじゃないか」という不安があると思います。その点はmonacaさんはどう考えていますか。

monaca:壁にぶち当たるのは、ある程度経験を積んでからではないかと思っています。その段階にならないと、そもそも壁が見えないというか。

 先ほどお話したように『90分でいきなりピアノが弾ける本』は、僕がやっているピアノレッスンを本にしています。本物のレッスンにできるだけ近づけるために、サンプルの音源や動画も収録しました。

 これまで、僕のレッスンを受けている人で「なんとなく弾けるようになった!」「ピアノって、おもしろい!」と感じるまでに壁にぶち当たることはまずないです。

 それは「指の動かし方の反復練習」のようなことから始めずに、いかに早く、楽しく弾けるかにこだわっているからです。

 ただし、その先で「もっとうまく弾きたい」となっていけば、当然いろんな壁にぶち当たるとは思います。

 僕はふだん作曲をしているのでその話になりますが、「作曲ができる」という段階になるのも全然難しくないんです。じつは『90分でいきなりピアノが弾ける本』でもピアノを弾いているうちに、作曲ができるレベルになっているんです。

 でも、ある程度作曲ができるようになるからこそ、「テレビから流れてくる曲は、自分の曲と全然違う……」と感じるようになって、壁にぶち当たってくるんです。

 子どもがマンガを描くのと同じで、好きでマンガを読んでいたら、それに飽き足らず、自分で描き始める人はけっこういますよね。そのときは、楽しくて夢中で描いていて、壁なんて感じません。

 でも、「マンガ家になりたい」「プロを目指す」と思い始めると、自分が描いているものとプロの作品の違いに気づいて、そこから壁を感じ始めるのだと思います。

 ピアノも、作曲もみんな同じです。その壁を越えるか越えないかは自由です。時間や労力を投資して、うまくなるまでやるか、やらないか。そこは人それぞれで、本当にやりたいならそのレベルを目指せばいい。

 ただし、僕のピアノレッスンや『90分でいきなりピアノが弾ける本』で教えていることは、その手前の話です。とにかく「簡単に、早く、楽しく」弾けるようになる。そこを目指しているので「壁にぶつかって前に進めない」と感じることはないはずです。

monaca:factory
作曲家。ボカロP。
小学校入学とともにピアノをはじめる。教本の練習は嫌いだったが、中学生時代に自分で好きな楽譜(ファイナルファンタジーシリーズなど)を買って弾くようになり、音楽の楽しさに目覚める。高校ではブラスバンド部でチューバを担当。大学時代に初音ミクに出会い独学で作曲をはじめる。音楽活動と並行しIT系会社に就職、プログラマーとなるも、音楽への興味により2年目に退職。以降フリーランスの作曲家として活動を開始する。歌モノからBGM制作まで総制作数は12年間で500曲を超え、動画サイトで100万再生を超える楽曲も発表している。作曲と並行して都内でピアノレッスンを行っており、楽譜がよめない楽器未経験者でも1日でピアノが弾けるようになると好評を得ている。学びの楽しさを教えることが好きで、中学・高等学校の教員免許(英語)を取得。DMMオンラインサロンにて「音楽クリエイターになる学校」を運営中。著書に4万部を超えるベストセラーになった『作りながら覚える 3日で作曲入門』やコミックエッセイ『作曲はじめます!~マンガで身に付く曲づくりの基本』(共にヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)がある。
公式サイト:https://monacafactory.com
「かんたんに楽しく! 挫折しない!」今から始めてもピアノが上達する方法