なぜ、ユダヤ人はエルサレムへ戻らなかったのか?
さて、このユダヤ人たちはおよそ60年、バビロンの地で生活していました。
やがて新バビロニア王国は、ペルシャのアカイメネス朝のキュロス2世に滅ぼされます。
キュロス2世が、バビロンを散策していると、ユダヤ人の住む地区がありました。
そして彼らが、エルサレムから連れ去られてきたことを知ります。
キュロス2世は気の毒に思い、彼らを解放しました。
私が世界の帝王になったのだから、おまえたちはどこに住んでもいい。エルサレムへ帰るもよし、バビロンに残るもよし。自由にせよ、と。
ところが、ほとんどのユダヤ人はエルサレムへ戻らなかったのです。
当時の平均寿命は30歳程度でした。
ユダヤ人がバビロンに住みついてから、60年ほどが経過しています。
彼らのほぼ全員がエルサレムを知らなかったことでしょう。
僕は三重県の山深いところにある美杉村で生まれました。
美しい村ですが、典型的な限界集落です。
もしもこの村の人々が遠い昔に、東京に連れてこられて、2~3世代が経過した後に、美杉村に帰ってもいいよ、と言われたらどうするでしょうか。
行ったこともない遠い故里へ、住み慣れた東京を捨てて帰るでしょうか。
帰っても、すでに代替わりをしていますので、知人も友人もほとんどいないでしょう。
ユダヤ人たちはバビロンを離れなかった。
バビロンは当時世界随一の都だったからです。
こうしてユダヤ人のディアスポラ(散在)が始まりました。