「優れたやり方」にも穴がある。そこを突けば勝機はある
宇佐美:ちなみに、平尾くんのインプットはどのようなものですか。
平尾:私は宇佐美さんと違って歴史から学ぶのが苦手なので、物事を構造化するタイプです。成り立つ現象と成り立たない現象を細やかにフレームワークにして、前提条件でうまくいくのか構造的にうまくいくのかをろ過して要素を増やし、その要素を組み合わせていくことをずっとやってきました。
宇佐美:へえー。
平尾:「優れたやり方」から「別のやり方」に向かうのが好きなタイプで、だからこそ、ベースには「優れたやり方」がないとダメなんですけど。
宇佐美:お話を聞きながら、若いころの羽生善治さんの考え方に似ていると思って。
――羽生さんが同じようなことをおっしゃっているんですか?
宇佐美:将棋の棋士は、若いころは何手先まで読むかということをやる。いろいろな可能性を自分の頭の中で全部シミュレーションし、その中から最善な手を選び取っていくんですね。そういうアプローチでやっていくんですけど、ある程度年齢を重ねてくると、そこに直感力というか、全部をシュミレーションしなくてもこの辺じゃないかとあたりをつけて、そこから思考を深めていく形に変わっていくという話でした。
平尾:このベン図で伝えたかったのは、競争に勝てる人は「優れたやり方」でいいと思うんです。競争に勝てて、winner takes allにできればそれでいい。でも、時間が経ってから「別のやり方」に行く人があまりにも多いんです。そうすると、そこにはすでに果実はないんですね。私はすべての象限にマーケットはあると思っています。どんなところにも小さかろうが大きかろうが、そこに何人入れるか見えないのが嫌なので「別のやり方」をつくっていくタイプなんだろうと思っているんですね。先に沖に出て浮いて大波を待てる方もいらっしゃいます。でも私は、待つのが嫌い。自分だけ大波を待っていたり、一番で乗るのは気持ちがいいと言われるんですけど、流派が違うと思っています。
――宇佐美さんは何派ですか?
宇佐美:僕は、波があるところに行く派です(笑)。大きい波があるところに行く。
平尾:でも、浮いているタイプじゃないですよね。
宇佐美:ええ。沖でプカプカ浮いているタイプではない。でも、後から「優れたやり方」をやる人が徹底的にやれば、先行している人でも立場は安泰ではないし、たまたま運が良くてそこにいる人たちは絶対に続きません。
平尾:「優れたやり方」を追い抜くんですね。めっちゃ怖い(笑)。戦いたくないですね。
宇佐美:組織の30人の壁や、売り上げ10億の壁があるので、急成長している会社ほどつまづくので、それをちゃんと後からキャッチアップすれば、勝てる。
平尾:恐ろしいですね。(笑)。とても興味深いお話でした。ありがとうございました。
宇佐美:ありがとうございました。楽しかったです。