「会話に苦手意識がある人」が今すぐやめるべき3つの言葉
『伝わるチカラ』著者・井上貴博 TBSアナウンサー インタビュー
会話が苦手な人がやめるべき3つの言葉
──「伝わるチカラ」を身につけるために、私たちが日常生活でできる習慣などがあれば、教えてください。
井上:手軽にできることでいうと、次の3つの言葉をなるべく使わないようにする、というのは有効かもしれません。
それが、
・語尾の「ね」
・「~させていただく」
・「すみません」
の3つです。
──よく使う言葉ばかりですね……でも、なぜですか? 柔らかい印象にしてくれる言葉ばかりなので、むしろ使ったほうがいいのでは? とも思うのですが。
井上:もちろん、絶対に使うな、というわけではありませんし、私も使うときがあります。ただ、この3つの言葉をできるだけ使わないようにすると、自分が普段、いかにこういった曖昧な表現に頼っているかがわかるはずなのです。
この3つの言葉を使わずにコミュニケーションをとろうとすれば、語彙を増やしたり、別の言葉に言い換えたりと、頭を回転させながら会話をしなければなりません。それが、いい訓練になるのです。
──たしかに、「ね」と言っておけば、なんとなく柔らかいニュアンスになるとか、「させていただきます」「すみません」と言っておけばへりくだった印象になるとか、安易にこの言葉に頼ってしまっている気もします。
井上:人間は弱い生き物なので、相手からの同意や共感がほしいんですよね。でも、下手に出すぎるのも考えもので。責められたくないから、つい「すみません」と言ってしまう、「させていただく」と言ってしまう。そんなこと、ありませんか?
──ああ、身に覚えがあります……。
井上:そういう自己保身するための言葉づかいに慣れてしまうと、相手との間に壁を作ってしまいます。私も、つい使ってしまうことはあるのですが、それでも、意識するようにしてから、自分の言葉をとり繕わなくなりました。
婉曲表現で誤魔化そうとしない。ときには言い切る勇気を持つことで、見える世界も変わってくるんじゃないかと思います。自分の言葉に責任を持てる人でありたいですね。やっぱり、ちょっと怖いですけど(笑)。
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この本は「好きな男性アナウンサーランキング」トップ10入り、報道番組『Nスタ』平日版の総合司会として活躍、人気・実力を兼ね備え、いまや“TBSの夕方の顔”ともいえる井上貴博アナウンサーが、15年間にわたりアナウンサーとして艱難辛苦を乗り越えながら培った「伝わるチカラ」を初公開した渾身の作です。仕事でもプライベートでも、自分の言いたいことが「伝わらない」を「伝わる」にかえたい、すべての人に向けて圧倒的な熱量を注いだ本です。
アナウンサーは「なぜ、こんなにもスムーズに話せるのか?」「もともと話が上手いんだろう」「話す才能があるのだろう」と多くの人は思うでしょう。でも、違います。井上アナは、そもそもアナウンサーを1ミリも目指したことがなく、プライベートでは聞き役に回ることの多い性格。しかも「地味で華がない」とよく言われるほど、派手さもない。そんな井上アナが、どうやってテレビ・ラジオの第一線で勝負できるほどの「伝わるチカラ」を持てるようになったのか? じつは誰でもできるのに意外とやっていない「地味で華がない井上アナが実践した52のこと」を興味深いエピソードとともに1冊にまとめました。たとえば――
◎最初の3秒間に全力を注ぐ
⇛ 前傾姿勢と相づちが話し手を饒舌にする
◎「句点(。)をたくさんつけながら話す
⇛ 一文を短くしてダラダラ話し続けないようにする
◎おばあちゃんに話すようにゆっくり話す
⇛ 自分が思う以上に話すペースはゆっくりでいい
◎「うまく話そう」と思わなくていい
⇛ 話すときは毎回、実験のつもりでとり組む
◎プレゼンでは原稿を読んでもOK
⇛ 大事なデータは、むしろ読み上げたほうがいい
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著者・井上貴博TBSアナウンサーからあなたへ
この本では、私の経験のなかから、「伝わる」ということについて語っています。何しろ私自身が成長途上にありますから、伝わる話し方の正解ではありません。強いて言えば、私が公開するのは「伝わる」にかかわる現時点での答案用紙です。
そもそも同じようなテーマで、たくさんの人がさまざまな角度から語っているということこそ、正解が1つもないことの証拠です。ですから、くれぐれも正解を期待しないでください。
また、意図を曖昧にせず、明確にしたいとの想いから、あえて断定口調、言い切りで綴っています。ところどころ生意気な印象を持たれるかもしれませんが、すべては私自身が“できない自分”に向けて言い聞かせながら書いたものであり、「本当はこうありたい」という願望の表れでもあります。
単純に読み物として楽しんでいただき、「こんなヘンなアナウンサーがいるんだ」「アナウンサーが必死で背伸びをしている」などと笑ってもらえれば嬉しいです。
井上 貴博
(いのうえ・たかひろ)
TBSアナウンサー
1984年東京生まれ。慶應義塾幼稚舎、慶應義塾高校を経て、慶應義塾大学経済学部に進学。2007年TBSテレビに入社。以来、情報・報道番組を中心に担当。2010年1月より『みのもんたの朝ズバッ!』でニュース・取材キャスターを務め、みのもんた氏の不在時には総合司会を代行。2013年11月、『朝ズバッ!』リニューアルおよび、初代総合司会を務めたみのもんた氏が降板したことにともない、2代目総合司会に就任。2017年4月から『Nスタ』平日版の総合司会。2022年4月、自身初の冠ラジオ番組『井上貴博 土曜日の「あ」』スタート、第30回橋田賞受賞。同年5月、初の著書『伝わるチカラ』を刊行。
【本書の目次】
序 章 大切なのは「伝える」より「伝わる」こと
■「伝わる」ための努力をしていますか?
■先輩をライバルに「伝わるチカラ」をのばす
■アナウンサーになる気はなかった
■自分にしかない武器で勝負する
■「この写真を見て30秒話してください」
■「30秒間、日本の名所でしりとりをしてください」
■敵が多そうなテレビ業界で成長につなげる
■苦渋の決断で成長の道を切り拓く
■29歳の大きなチャレンジ
■模範的アナウンサーの逆を行く
■精神的にどん底の状態を経験
第1章 「伝わらない」が「伝わる」に変わる8つのテクニック
①句点(。)をたくさんつけながら話す
――一文を短くしてダラダラ話し続けないようにする
②カタカナ語を使ったら日本語を添える
──横文字を使いすぎると情報が伝わりにくくなる
③噛むこともテクニックのうち
──間違いを気にするより積極的に発言することが大事
④おばあちゃんに話すようにゆっくり話す
──自分が思う以上に話すペースはゆっくりでいい
⑤伝えたい情報は1つに絞る
──あれこれ伝えようとしても逆効果、1つを丁寧に伝える
⑥「ものすごく」「めちゃくちゃ」など過剰な修飾語は省く
──修飾語を使うなら「ここぞ」というときに限定する
⑦身近なモノと比べてイメージをふくらませる
──1つだけでなく2つ3つと比べれば笑いも誘う
⑧「うまく話そう」と思わなくていい
──話すときは毎回、実験のつもりでとり組んでみよう
Column1
RPGの主人公になったつもりでチャレンジする
第2章 「信頼感」が高まる8つの考え方
⑨当たり前のように使いがちな言葉を疑ってみる
──自分がしゃべることを客観視するクセをつける
⑩あおり文句より正直に伝えることが一番
──誇張表現でひきつけようとしても不信感を招くだけ
⑪客観的な数字に基づいて話す
──根拠のない印象操作をしない
⑫「説明」という言葉を使わない
──上から目線になりそうな言葉に注意する
⑬「ね」より「よ + 質問」で会話を膨らます
──同意を求めるだけでなく、ときには言い切る覚悟も必要
⑭プレゼンでは原稿を読んでもOK
──大事なデータは、むしろ読み上げたほうがいい
⑮原稿にペンを入れておく
──その後、下読みをしないトライアルをしてみる
⑯初対面の人のことは事前に調べておく
──調べると相手のことを好きになれる
⑰最初の3秒間に全力を注ぐ
──前傾姿勢と相づちが話し手を饒舌にする
Column2
好感度は気になってもスタイルを崩さない
第3章 「自分の意見」をはっきりさせる7つの話し方
⑱自分を主語にして話す
──他人事にせず、当事者意識を持つことが大切
⑲自分の意見をシンプルに言い切ることをためらわない
──わからないことはごまかさずに認める
⑳自分の責任で思ったことを話す
──空気をうかがいながら話さないようにする
㉑「意見」と「本音」の違いを知る
──本音を求めるとコミュニケーションがギスギスしがち
㉒あえて逆の立場から反対意見を考えてみる
──「本当にそうなのかな?」と疑いの目を向けよう
㉓批判するなら「こうしたほうがいい」を出す
──批判ばかりしていると議論が進まなくなる
㉔自分ができないことは人に求めない
──批判する前に「自分はどうなのか」を問う
Column3
厳しい意見を自分の成長につなげる
第4章 「伝わる人」になる8つの自己演出法
㉕リアクションは中途半端でなく大きな動作がいい
──体を大きく使って喜怒哀楽を伝える
㉖堂々としなくてもいい
──トチったりアワアワしたほうが共感を得られやすい
㉗自分をアピールしすぎない
──「自分はどんな人と一緒に働きたいか」を想像してみる
㉘見た目の印象と違う発言で意外性を演出する
──先入観を逆手にとってギャップを効かせる
㉙笑いにこだわりすぎない
──一生懸命な姿勢のほうが聞き手の心を揺さぶる
㉚目的に沿って服装を変えてみる
――他の人と違う見た目で自己演出する
㉛資料は文字よりも写真やイラストを重視する
──資料を見せるタイミング一つで受ける印象が変わる
㉜極力テンションの上げ下げがない生活を送る
──淡々とした生活が安定のアウトプットに通じる
Column4
嫌われる覚悟を持とう
第5章 「伝わるチカラ」が高まる10のインプット法
㉝「反省」が語彙力や表現力を高める
──1日の終わりに自分の発言を振り返る時間をつくろう
㉞スマホの「類語辞典」で芋づる式に語彙が増える
──とにかくたくさんの言葉を目にする習慣をつけておく
㉟「自分だったらどう言うか」を考える
──実際に使えそうな言葉を貪欲に探そう
㊱仕入れた言葉はとにかく使ってみる
──コツコツとメモするより発音しよう
㊲若い人に最新情報を教えてもらう
――あえてのミーハー根性で流行には積極的に食いつく
㊳言葉づかいを指摘されたらラッキーに思う
──正しい言葉づかいを教えてもらうのは本当に貴重
㊴自分とは違う価値観の人に触れる
──異業種の人との交流は自分を知る大チャンス
㊵中性的な言葉づかいを織り交ぜる
──語尾をやわらかくすると話を聞いてもらいやすい
㊶スピーチは事前の情報収集に全力を注ぐ
──上手なスピーチより攻めの姿勢が評価される
㊷お手本になる人の真似をする
──身体に染み込むくらいじっくり観察する
㊸自分にとってのロールモデルを持つ
──「この人のようになりたい」という目標があると頑張りやすい
Column5
自分より実力のある人と戦って勝つことを目指そう
第6章 人間関係がうまくいく9つの「伝わる技術」
㊹“タメ語チャレンジ”で先輩との距離を詰めてみる
──先輩には少し生意気なくらいの態度が効果的
㊺年下から突っ込まれるスキをつくる
──日頃の努力が「人から話しかけられやすい雰囲気」につながる
㊻自分より若い人に教えを乞う
──若い力を活用したいなら、まず話しやすい環境をつくる
㊼「下手マウンティング」はほどほどに
──過剰にへりくだりすぎると、人との距離感ができてしまう
㊽「~させていただく」を使いすぎない
──へりくだらないほうが人間関係はうまくいく
㊾フィードバックはポジティブなことから入る
──「相手がどう受け止めるか」を踏まえて最適な言い方を探ろう
㊿ちょうどいい緊張感を持つ
──ときにはチーム内での対立をいとわない
51 職場の仲間と遠慮なくぶつかってみる
――ぶつかった先にコミュニケーションが定まる
52「MCになったつもり」で人の話を聞く
──話が苦手な人は聞くスキルを高めることが肝心
Column6
やりたい仕事があれば、きちんと意思表示をする
終 章 失敗は何よりの財産、恥をかけることは幸せ
■失敗して傷ついてこそ成長する
──傷つくチャンスを与えられているだけでも恵まれている証拠
■恥をかかないと成長はない
──「恥をかけるチャンスは今のうち」と考えよう
■間違いなく「言われているうちが花」
──批判の言葉は周囲からの期待の裏返しである
■悔しさを仕事の推進力に換える
──偏見に対しては結果を出して黙らせるしかない
■業界や会社全体を俯瞰して考えてみる
──自分の立場を俯瞰すると大胆な発言ができる
■制約があるからこそ、“攻め”やすい
──会社には少しくらい不満を持っていたほうがいい
■難しそうな仕事こそ積極的に挑む
──得意な仕事ばかりしていると「できる仕事」は減っていく
おわりに