それは間違っていないのですが、本人としてはマイクロソフトやウインドウズと関係なく、自分ができることを評価されたかった。そこで当時、ブログがはやり始めたので、会社のブログでも自分の名前を出し、個人でもブログを公開して、技術者としての個人、ビジネスパーソンとしての個人である自分をできるだけ前面に出して発信するようにしていました。

 それでも、その後マイクロソフトからグーグルへ転職すると、結局はマイクロソフトという看板がグーグルにかけ変わっただけでした。グーグルを退職すると今度は「元グーグル」という看板に変わってしまう。これは非常に悔しかったです。

 しかし最近ではようやく「元グーグル」と言われなくなりました。これには、ひとつ、とても分かりやすい理由があります。それは、私が「常に過去を超える何か」をやり続けるようにしているということです。

 グーグルで成し遂げたことは、それはそれで私にとって誇りであり、携わったプロダクトについては自分の作品のようにも思っています。けれども、今は個人として、あるいは自分の経営する会社で、しっかりと結果を出せるようにならなければいけないと感じます。

看板が付け変わって
いくこと自体は悪くない?

 このように考えていくと、もしかしたら、看板が次々にかけ変わっていくこと自体は悪いことではないのかもしれません。「あの看板の時にはあれ」「この看板の時にはこれ」というように、頑張ってやってきたことが積み重なっていくことで、最後には自分がその主であるということが見えてくるのかもしれない。最終的に、私が目指したいのはそういう世界です。

 そういう意味では、書籍を上梓したことも、自分の自信に大きくつながっています。書籍は紛れもなく自分の作品ですから、やはり出版したことは誇らしく思います。自分が作った作品と呼べるものをたくさん持てるようになると、看板は自分を主とするものに変わっていくのかもしれません。