わたしたちがいま生きているのは「ストレス社会」とも呼ばれる、精神的に疲労が溜まりやすい時代だ。気持ちが沈みがちな人も多いのではないだろうか。
人間関係や仕事、お金や健康など、悩みの種を挙げはじめたらきりがないが、むやみにストレスを溜め込んでしまうと心身に不調をきたしてしまう。
そこで、精神的不安を軽減するために参考になるのが、仏教の視点から人生の様々なストレスや悩みへの対処法を語るYouTubeチャンネルが人気の、現役僧侶・大愚元勝の初の著書『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社刊)だ。SNSでは「心が洗われた」「人生の歩み方を学んだ」といった感想が相次いでいる。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、ストレスや怒りに振り回されて「メンタルが崩壊しがちな人」に欠けている1つの思考法を紹介する。(構成/根本隼)

ストレスや怒りで「メンタルが崩壊しやすい人」に欠けているたった1つの考え方 Photo:Adobe Stock

イライラ・怒りの原因は「自分への執着心」

 人間の感情は、瞬間的に、突発的に爆発するものではありません。いくつもの火種がくすぶり続け、合わさり、少しずつ火力を増していきます。ですので、イライラや怒りを鎮めるには、「心の火」が燃え上がる前に「種火」のうちに鎮火すべきです。

 人がイライラの火種を抱えてしまうのは、「自分に対する執着心」が強すぎるから。要するに、「自分のことを大切に思いすぎている(自分のことを好きすぎる)」からです。

 大切なものを壊されたとき、人の心にイライラが芽生えます。たとえば、「100円ショップ」で買った食器を子どもが割っても腹が立たなかったのに、「1枚1万円」のお皿を子どもが割ると怒りたくなるのは、1万円のお皿のほうが「大切だから」です。

 自分で自分のことが「好きすぎる」人は、自分を大切に思うあまり、「自分が否定される」ことを極端に恐れています

 思い通りにいかないとき、イライラしたり怒ったりするのは、防衛本能の発露です。他人を攻撃することで、大切な自分を守ろうとしているのです。

自分の感情を自覚することが重要

 では、どうすればイライラの種火を消すことができるのでしょうか。仏教が教える種火を消す処方箋は「瞑想」です。

 瞑想といっても、坐禅を組んだり、心を静めて仏に祈ったりすることではありません。瞑想というのは、心を「無」にしてイライラを抑えつけることではなくて、「イライラしている自分を認めて、全身で感じる」ことです。

 「今、自分はイライラしている」「このモヤモヤ感は、きっと怒りの感情だ」と、客観的に自覚することが瞑想です。

人は「イライラしている自分」を認めたくない

 多くの人は、イライラしているとき、「イライラしていないフリ」をします。他人に「そんなことでイライラするなよ」と指摘されると、「イライラなんかしてないよ!」と言い返したくなるのは、「イライラしている自分」を認めたくない、という反発心からです。

 怒りやイライラの感情は、抑えつけようとすると、反発して大きくなりやすい。一方で、「イライラしている自分」に気づき、「自分は今、イライラしはじめているんだ」と認めた瞬間、自分の心を落ち着かせることができるのです。

(本稿は、『苦しみの手放し方』より一部を抜粋・編集したものです)