わたしたちがいま生きているのは「ストレス社会」とも呼ばれる、精神的に疲労が溜まりやすい時代だ。気持ちが沈みがちな人も多いのではないだろうか。
人間関係や仕事、お金や健康など、悩みの種を挙げはじめたらきりがないが、むやみにストレスを溜め込んでしまうと心身に不調をきたしてしまう。
そこで、精神的不安を軽減するために参考になるのが、仏教の視点から人生の様々なストレスや悩みへの対処法を語るYouTubeチャンネルが人気の、現役僧侶・大愚元勝の初の著書『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社刊)だ。SNSでは「心が洗われた」「人生の歩み方を学んだ」といった感想が相次いでいる。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、失恋の痛手から立ち直るための3つのステップを紹介する。(構成/根本隼)

【現役僧侶が教える】失恋の打撃から立ち直るための3つのステップとは?Photo:Adobe Stock

人間は「与える」よりも「受け取る」ことに執着する

 人は、愛を与えることよりも、受け取ることに執着します。

 そして、十分な愛を受け取ることができなかったとき、その相手に不満や不安を持つようになります。自分が相手に与えた愛よりも、自分が受け取る愛のほうが、大きくなければ満足できないからです。

人間の心には「尽きることのない欲望」がある

 仏教には、「渇愛」という言葉があります。

 渇愛とは、人間の心を大きく揺さぶる「尽きることのない欲望」のことです。仏教において、「もっとも苦しい煩悩」とされています。

 この渇愛を乗り越えることが人間の課題であると、お釈迦様は説いています。

「忘れる努力」が苦しみを増やしてしまう

 失恋の後、元交際相手に対する執着心がなくならない理由は、あなたが相手を「忘れようとしている」からです。

「忘れたい」という気持ちは痛いほどよくわかりますが、忘れようとあがくほど、思い出や執着心に縛られてしまいます。人間の意志は、それほど強いものではありません。

 本当に忘れることができるまでには、長い時間を費やしてしまいます。「忘れる努力」をすればするほど思い出す。こうした矛盾をはらんでいるのが、人の心です。

 元交際相手に対する執着から脱却したいのなら、「忘れる努力をやめる」ことです。そして、新しい環境をつくる努力をすることです。

失恋の打撃から立ち直る3ステップとは?

 多少、荒療治になりますが、仏教の教えをベースにして私がアドバイスしている、「失恋した相手への執着心を捨てる」ための3ステップを紹介します。

◎第1ステップ
携帯電話、写真、手紙など、失恋した相手との思い出はすべて処分してください。思い出すきっかけになるものは、全消去です。あなたの心の中に、まだ「相手」がいたとしても、相手の心の中にはもう「あなた」はいません。

◎第2ステップ
今の自分の惨めさを、自分で想像してみてください。「ああ、いかないで!」と相手にしがみつく自分ほど、情けないことはありません。

◎第3ステップ
引っ越し、転職、習い事など「新しい環境」を用意してください。そして、その環境になじめるように努力してみましょう。相手のことを思い出したら、すかさずもみ消して、新しい仕事や習い事に集中するのです。

 賞味期限が過ぎた恋愛は捨てる。そのためには、渇愛する心を、自分の将来へのエネルギーに転換し、まったく「新しい環境」に自分を投げ入れてみる。そうすれば、失恋の痛手から立ち直ることができるでしょう。

(本稿は、『苦しみの手放し方』より一部を抜粋・編集したものです)