東ヨーロッパを理解するための視点
――たしかに、東ヨーロッパの国々について、ルーマニアとか、ハンガリー、ポーランドなど国名は知っていても、それがどんな国なのかをほとんど知らないです。
安藤:そうなんですね。でも、ちょっとでもイメージすることができれば、世界の見え方は変わってくる、それが地理を学ぶ価値だと思います。
――たとえば、安藤先生は東ヨーロッパをイメージしていくときに、どんな視点で調べたり、考えたりしているのでしょうか。
安藤:今回は、東ヨーロッパを捉えていく上で、この地域を取り巻く国々や地域との関係を考えました。
つまり東ヨーロッパは、西ヨーロッパ諸国や、ロシアをはじめとする旧ソ連の国々、イスラム圏の国々と、それぞれどのような関係なのかという視点をもちました。
それらの関係は、国ごとに異なるわけですが、さらにその関係がどのような条件でできていったのかと考えながら、それぞれの国のイメージを膨らませていきました。
たとえば、東ヨーロッパ各国は民主化後間もない1990年代には経済が混乱しますが、欧米や日本などからの投資が進んで順調に経済成長していきます。その要因には安くて良質の労働力が提供されたことがありますが、それは社会主義時代を経て生まれた西ヨーロッパ各国との格差、そしてEUという同一の経済圏を構成するようになったということが背景としてあります。
また先ほどのウクライナについてお話ししたように、現在の旧ソ連の国々を見ると、ロシアとの関係には大きな違いがあることは明らかです。それは旧ソ連時代に経験した社会主義が、各国にとってどんな意味をもっていたかということと結びついていると思うわけです。
さらに東ヨーロッパの南にはイスラム圏の地域が広がっているので、とくに南に位置する国については、イスラム圏の国や地域との関係も、これらの国々をイメージする上で大事な視点となってきます。
ついでに、関係について考えるとき物理的な距離や位置を見ることもおもしろいですよ。
たとえばポーランドを見ると、東側はベラルーシと接し、西側はドイツと接しています。こうした物理的な距離や位置が、国のあり方に少なからず影響を及ぼしているとも思っています。