佐藤 最近はマネーがさらに大きく上昇していますが。
林 そこが大問題なんです。コロナ対策です。
コロナで大型の不況がきそうになったので、「お金をじゃんじゃん配れ。もっとやれ」という政策を大々的に始めたのです。リーマンショックから立ち直った米国は味を占めたんです。「お金を配れば、景気は戻る」と確信したんです。そこで、マネーを一気に25%も増やしました。増えたお金を手にした人々は、そのお金で株を買いました。
米国はさらにお金を配ろうとしています。景気が本格的に戻らないからです。マネーの総額は、コロナ前は15兆ドルだったのですが、そこに6兆ドルを追加しました。バイデン現政権はさらに1.9兆ドルを増やす予定です。コロナ前から50%の増額です。
佐藤 あまりに強引にマネーを増やしていますよね。こんなことをしていいのでしょうか。
林 いったん犯罪に手を貸すと、もう逃げられません。それと同じで、政府はお金を配ることから抜け出す手立てが浮かばないのです。因果応報という言葉がありますよね。「食べすぎれば太る」「寝不足になれば疲れる」といったのと同じで、大量のマネーは将来の問題をつくることになるわけです。
そんなことは為政者たちもわかっている。それでも、「背に腹は代えられない」というやつです。差し迫った危機を回避するためには、将来の問題を後回しにしようと考えたわけです。
佐藤 最近では物価の上がりすぎを反省して、緩和政策を縮小する動きが出ていると聞いていますが。
林 今後、景気が悪化したり、株価が下落したりすれば、慌てて元の緩和政策に戻すでしょう。コロナ発生前にも緩和縮小の動きがあったのですが、コロナが発生すると、過去に類を見ない大きさの緩和になってしまったようにです。