会社に利用されるのではなく、会社を利用する

社会人の中には、これらの会社の罠になかなか気づかずに、「会社にハメられた」「会社のせいで……」と思ってしまう人も少なくない。

しかし、実はそれは、自分に対して厳しさやシビアな目線を持っていなかったからにすぎない。さらに実力や結果が伴っていなかったから、つらい境遇になってしまったということだ。

現に、厳しさやシビアさを持ち、さらに実力と結果が伴っている人は、会社に利用されるのではなく、うまく利用している。会社に誇りを持ち、また本人も生き生きとしている。そこに「会社の罠」という感覚はない。

会社から期待されるビジョン以前に、それより大事なものとして自分のビジョンを持ち、さらに会社の中の自分の存在意義や価値だけでなく、社名を外したところでの社会の中の自分の価値を意識し、実力をつけていかないと、いつの間にか会社にぶら下がる存在になっていく。

僕は、多くの社会人と接する中で、生ぬるい環境の中で、能力、特に自分の頭で考える力、発想する力、さらに行動力を削がれてしまっている人がいかに多いかを実感している。

僕はかつて、自分や周りの友人などの経験から、社会に出ると、一般に頭のよさ(深く多面的に考える力など本質をとらえる力、回転スピード、問題意識、発想力など)は、学生時代の5割増しから10割増しに研ぎ澄まされるものだと思っていたが、逆に後退している人も本当に多いのが現実だ。それは、それでもこれまで通用してきてしまった生ぬるい環境が存在していたということだ。

「これからも、それで通用し続けるのなら、それでもいい」という考え方もあるかもしれないが、一部の業界や会社を除いて、おそらくこれからの社会はそれでは生き残っていけないだろう。たとえ生き残っていけたとしても、それで自分の願望を実現するということはあり得ないだろう。

会社に利用されないための5つの方策

「会社の罠」にはまらないために、僕は次の5つを提案したい。

1.学生のうちに我究しておく
学生のうちに、少なくとも一度はじっくりと我究しておくこと。自分の夢やビジョンを自分で持っておくことと、自分でつくれるようになっておくという2つの意味から。

2.社外の友人をたくさん持つ
入社後、会社の常識に染まり切らないように。自分のビジョンと会社の期待とのギャップに自分が押しつぶされてしまわないように、何でも語り合えて切磋琢磨できる、我究できた友人を社外に持つ。

3.夢の実現に近づける会社に行く
自分の夢の実現やビジョンの実現に向かっていると思えることを業務としている会社に行くこと。やりたいことをやれる可能性がある会社に行くこと。

4.トップで内定する
できるだけトップで内定すること。

5.内定後、入社後も我究を続ける

ここで一つ注意しておきたいことがある。この本で、特にこの章で述べることの多くを、「そんなの当たり前だ」とする会社がある一方で、「その考え方は理想にすぎない」とする会社もいまだにある。もちろん後者は基本的に生ぬるい会社である。

生ぬるい会社は、意識改革できすぎた人間や、やる気がありすぎる人間を現実として採用したがらない。採用しても配属した現場で扱いづらい、その人間の力を生かせる上司がいない、水が合わないなど、ハンドルできなかったりする。

要するに、生ぬるい会社には意識改革できすぎた学生は落ちるということだ(意識は改革できていても人格や能力が伴っていない学生が多いのも事実だが)。

きみにはそういう現実を分かった上で就職活動を進めていってほしい。受ける会社がどの程度、意識改革ができているのかも考慮していく必要がある。

(本稿は、『絶対内定2024 自己分析とキャリアデザインの描き方』を抜粋、再構成したものです)