楽天が逆境を打破するための
二つの着眼点

 楽天がこの逆境を打破するための着眼点は、二つあります。

 一つは相変わらず強いポイント経済圏を武器に、囲い込んでいる楽天ファン層をきちんと収益化しモバイル以外で成長していくこと。そしてもう一つは楽天モバイルの強みの再構成でしょう。

 実は、楽天モバイルのユーザーは大きく二つ異なるユーザー体験をしています。「楽天モバイルは最高だ」と喜んでいる人たちと、「楽天モバイルはダメだな」と落胆している人たち。その最大の違いは、東京近隣住民かそれとも他府県住民かです。

 楽天によればモバイル基地局の人口カバー率が96%に到達し、楽天回線エリアでの楽天回線の利用比率が90%を超え、パートナー回線を提供するKDDIに支払うローミング費用はこれから減少していくことが期待されるといいます。

 ところが、実際の基地局の密度は都道府県によって大きく違います。そして圧倒的につながりやすいのが、基地局密度が高い東京都で、最近だと近隣県の神奈川、千葉、埼玉も基地局の密度がかなり上がってきました。一方で総務省のホームページで確認するとわかりますが、地方に行くと基地局の密度は薄くなります。実は、どこに住んでいるかによって楽天モバイルに感じる品質には住民格差があるのです。

 実は、今でも楽天モバイルの料金は、あらゆるユーザーセグメントで最安です。国民の約6割弱はデータ利用量が3GB未満なので、楽天モバイルなら月額980円です。さらに3割強がその上の3GBから20GB未満なのですが、楽天なら1980円。そして月20GBを超えるユーザーが約1割弱いるのですが、楽天ならこの層も月2980円。つながらないと思っているからこの価格優位性が新規ユーザーに訴求できていないのです。

 本当は楽天が「首都圏のユーザーには最強のサービスを提供しています」と言ってもいいぐらいなのですが、それがなかなか口にしづらい。その強みにどう踏み込めるかで楽天モバイルの今後が見えてくるのではないでしょうか?

 いずれにしても楽天グループ、勝負どころに来ているようです。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)