壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。『死ぬまで上機嫌。』には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。
夫婦関係に一定の距離感を保つ
妻から嫌われず、良好な関係を維持していくうえで、重要なポイントがあります。夫婦間でお互いに一定の距離を保つことです。夫婦だからといってベタベタくっついたり、相手の行動に干渉したりしても、何ひとついいことなどありません。妻のテリトリーを尊重し、みだりな侵入を慎むべきなのです。
まさに「親しき仲にも礼儀あり」です。例えば、奥さんが出かけようとするのを見て「おい、どこに行くんだ?」「誰と一緒なんだ?」「何時に帰ってくるんだ?」などとしつこく詮索し、挙げ句の果てには「メシの時間までには帰ってこいよ」などと命令口調でいい放つ。
振り返ってみると、「自分も同じことをしていた……」という男性も多いのではないでしょうか。しかし、これは最も避けるべき最悪の言動です。奥さんにとっては余計なお世話であり、煩わしいことこの上なし、なのですから。
妻にとってはた迷惑なこと
僕たち団塊の世代の男性の多くは、現役時代には「仕事人間」として、家庭をほとんど顧みない生活を送ってきました。過去に苦労をかけたことに関して、申し訳なく感じている人も多いかもしれません。だからこそリタイア後は、贖罪の気持ちもあいまって、できるだけ妻と過ごす時間を増やそうと考えがちです。
「やっと暇になったから、二人で海外旅行に行こう」「これからは夫婦一緒の趣味でも見つけて楽しもうじゃないか」なんてことをいい出すわけです。ところが、これが妻にとっては迷惑であり、本音をいえば、夫と一緒に過ごす時間をそこまで増やしたいとは思っていないのです。
妻の人間関係に踏み込まない自制心
オンライン旅行会社のエクスペディアジャパンが60代、70代のシニア世代の男女を対象に行ったアンケートがあります(2014年)。これによると、旅行に行くとき「妻と行きたい」と回答した男性は約90%に上りましたが、女性は46%が「友人と行きたい」と回答しています。
夫が妻に依存する傾向が強いのに対して、妻は夫以外にもさまざまな人間関係を上手に作っている現状がよくわかります。女性には女性の人づき合いがあるのですから、そこには踏み込まない自制心を持つことが大切です。それよりも、夫婦それぞれの交友関係を楽しんだほうが、家庭の平和が保たれるというものです。
ときどき暇を持て余した夫が、奥さんさん同士のグループに顔を出したがるケースが見受けられます。顔を出したいというより、居場所がないので、金魚のフンみたいにくっついてくるといったほうが正解でしょうか。女性のグループに一人だけ男性が加わると、女性たちは気を遣って会話が弾まなくなります。かといって、完全に無視するわけにもいかないので、つまらない時間になってしまいます。
夫婦はなるべく別々に過ごす
これは逆の立場を考えれば、すぐにわかるはずです。僕も友人同士でゴルフをしたとき、一組だけ夫婦で参加した人がいました。しばらくすると、慣れない奥さんのプレーに、旦那さんがイラついてきました。「いや、そうじゃない!」「こうだろう! 何やっているんだ!」。旦那さんの言葉は、徐々にとげとげしいものになっていきます。
そんなピリピリムードがしばらく続いたあと、ついに奥さんのほうがブチギレました。「うるさい! もういいから、あなたは黙っててよ!」。周りにいた僕たちは、何もいうことができず、無言でプレーを続けるしかありませんでした(笑)。結局、誰も楽しめないまま、1日を過ごすことになったのです。
やはり、夫婦はなるべく別々に過ごし、お互いに適度な距離を保ちながら生きていくのが一番。もちろん一緒の趣味を楽しむことがあってもいいですが、ベタベタしすぎるとロクなことがないのは断言できます。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)り一部を抜粋・編集したものです。