「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 本稿では、本書より内容の一部を特別に公開する。
「解決策を中立的に示す情報」を示す
自分の立場を相手にきちんと伝えるには、自分がその状況にどのように関わっているかを落ち着いて注意深く説明し、解決策について、中立的な情報を提供することだ。
たとえば、カスタマーサービスの担当者らが相手なら、このように話してみる。
「お客様に対してすみやかに回答し問題を解決したい、というみなさんのお気持ちはよくわかります。ただ、どちらの書類も修正するのに1時間ほどかかります。退勤時間直前に提出されると、今日中には対応できません。ですので、退勤前に完了させたい場合は、正午までに提出してください」
一言に「3つの要素」を入れる
このコメントは、大きく3つに分けることができる。
・お客様に対してすみやかに回答し問題を解決したい、というみなさんのお気持ちはよくわかります(「共感」をうまく伝える)。
・ただ、どちらの書類も修正するのに1時間ほどかかります(「中立的な情報」を提供する)。
・退勤前に完了させたい場合は、正午までに提出してください(「要求」を伝える)。
問題に対して迅速な対応を求められる職場では、難しい立場に追い込まれやすい。
だがそれでも、自分の立場を明確にし、自分に合った表現方法を用いれば、自分らしく対処できる。
結局、コミュニケーションにおいて重要なのは、どのように情報を伝えるかだけでなく、「自分が伝えたい情報を相手に十分に理解させること」なのだ。
大声で怒鳴ったりテーブルを叩いたりするのも、コミュニケーションのひとつの手段だが、内向型にとっては、もっとも効果的な方法とは言えない。
熟慮してから慎重に提案するという方法もあるが、相手が外向型の場合、この方法は却下せざるを得ないだろう。こちらがじっくり考えているあいだに、相手はさっさとつぎの問題に取りかかってしまうからだ。
コミュニケーションのしかたは、人によってそれぞれちがう。
内向型の人は、外向型になろうと無理をする必要はない。それぞれのちがいを尊重した上で、それぞれの相手に合ったコミュニケーション方法を見つけるほうが、はるかに重要だ。
(本原稿は、ジル・チャン著『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』からの抜粋です)