従来、オフィスは効率良くかつ快適に活用できることで、その利便性と利用価値をアピールし続けてきたわけだが、コロナ感染防止の観点から社員相互の直接交流が難しくなったことで、“場”としてのオフィスの役割は大きく変化したといえる。従業員全員を収容する必要が初めからないのであれば、オフィスはそれだけ少なくて済むし、リモートワークが促進されれば、賃料が高額な都心にオフィスを構える意味も薄らいでくるというものだ。
これまでのビジネス慣習によってなかなか推進することが難しかった“働き方改革”だが、コロナ禍に対応せざるを得なくなった各企業が試しに導入してみたら、意外にもすんなりとテレワークに移行できた結果、これまで必要だったオフィスが余るという現象が発生することになった。このためコロナ禍の長期化とともにオフィスの空室率が徐々に拡大していったものと考えられる。
これまでも六本木ヒルズや丸ビル、品川インターシティなど巨大な床が創出される大型オフィスビルの竣工によって、一時的に空室率が高まるという現象はあったが(リーマン・ショック時も一時的にオフィス空室率が拡大した)、コロナ禍においてこのような大規模オフィスが次々と竣工すればコロナ禍&テレワークの進捗によって需要が減少したオフィス市場は一体どうなってしまうのか…これが「東京のオフィス2023年問題」の端緒といえる。
注目の常盤橋タワーでも
開業時の空室率は10%
コロナ以前の2018年からコロナ禍に突入した2020年にかけては、幸いなことにコロナ前から新たに供給されるオフィスに入居する企業が順調に決まっていたこと、またオフィスの大量供給がなく需要と供給のバランスが取れていたことなどにより、冒頭で述べた通り、オフィス空室率は極めて良好な水準で推移していた。
またこれも幸か不幸か、2021年および2022年は東京オリンピック・パラリンピックのインフラ整備による人手不足などで、以前から新規のオフィス供給が控えめだったこともあり、コロナ禍においても空室率が7%前後にとどまっていたという見方ができる。
だが、2023年以降は一転してオフィスの大量供給が始まるため、これらの新規の床をどのように吸収・活用するのか、もしくはできるのかということが焦点となる。