ほかにも再開発が進む浜松町~田町エリアでも多くの計画が進んでいることから、巨大オフィスが2023年以降続々と新たなオフィス床を創出し続けることになる。

 これら最新の設備と仕様を誇る超高層オフィスビルは、当然のことながら賃料も周辺相場より格段に高額な水準となることが想定されるから、与信および信用力が担保できる大手企業以外に入居を検討するところはほぼ皆無であろうし、オフィスの移転(特に本社機能の移転)には多くの時間と労力を要することから、2027年度竣工予定のTORCH TOWERにおいても既に水面下での入居交渉が始まっている。

 供給サイドもコロナ禍でのオフィス需要の厳しさは把握しており、ワンフロア全てではなく小分けにして活用できるように工夫したり、複数の企業がオフィスの一部を共同使用できるようにしたり、オフィス・インテリアごと貸せるようにしたりとあの手この手で需要を喚起しようとしているようだ。

 東京都内の企業では2022年4月以降、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出されていなくてもテレワークは今も継続しており(コロナ前の就業体制へ一気に戻すと再びコロナ感染が拡大する局面に対応しにくくなるため)、東京のオフィス需要は依然として厳しい状況に変わりはないといえる。

 この状況下で、上記に掲出したオフィスビルだけでも合計200万平方メートル弱もの新規の床が創出されることになれば、「東京のオフィス2023年問題」(正確には2023年以降も続くのだが)は現実味を帯びて迫ってくることになる。

 折悪しく、ロシアのウクライナ侵攻による資材・食料価格の高騰や日米の政策金利の格差拡大による円安が発生し、その多くを輸入に頼らざるを得ない資材・エネルギー価格の高騰が足元で起きているから、オフィスのテナントとして想定される多くの企業で今後の業績の悪化が懸念されている。

 コロナ禍によるテレワークの実施・定着、円安などによる企業業績の悪化、物価の上昇傾向など、オフィス環境を取り巻く状況は決して芳しくはない。果たしてオフィス開発を手掛ける各デベロッパーにはこの状況を乗り越える手段があるのか、今後の推移を注視したい。

 コロナが明けて外資の日本での動きが本格化すれば、「東京のオフィス2023年問題」などあっという間に雲散霧消するとうそぶく業界関係者もいるにはいるのだが…。

(記事は個人の見解であり、執筆者が所属する会社の見解を示すものではありません)

(LIFULL HOME’S総合研究所・副所長チーフアナリスト 中山登志朗)