それに伴って、世界における「時価総額ランキング」の顔ぶれも変動。かつて上位を占めていた日本企業は、今では上記の巨大IT企業群に取って代わられてしまった。

 企業の開業率でも明確な差がついており、欧米諸国では10%前後に上るのに対し、日本では4.2%にとどまっている(19年時点)。

 また、スタートアップに対するM&A(企業の合併・買収)も同様で、18年時点での日本における件数はわずか15件。米国の約1%にすぎなかったという(産経新聞『スタートアップ支援、政府に司令塔、新しい資本主義実現会議、実行計画に反映へ』2022年4月12日)。

 米国のみならず中国でも、AlibabaをはじめとするIT大手の成長は著しく、星の数ほどのスタートアップが今も誕生していることはいうまでもない。

 岸田首相は、今年を「スタートアップ創出元年」とする意向だという。だが、「元年」だといっていること自体が、世界からすれば笑いもののレベルなのだ。

 これだけ後れを取っている中、投資額を増やすだけで、世界と伍して戦えるスタートアップが出てくるのか。教育面など、他の領域においても抜本的なテコ入れが不可欠である。

脱炭素シフトの潮流の中で
日本のエネルギー企業は遅れている

「グリーン・デジタル」投資では、「脱炭素社会」の実現のために、今後10年間に官民協調で150兆円の関連投資を行う計画だ。だが、これも胸を張って自慢するような話ではない。

 というのも、現在、化石燃料を扱う企業に対して「ダイベストメント(投資撤退)」を宣言する世界の投資家・金融機関が急増している(週刊エコノミストOnline『沸騰!脱炭素マネー:環境対応が遅れる日本企業から投資家が資金を引き揚げている……石油メジャーでさえ「最エネ転換」を宣言 環境対応できない企業には淘汰の道が待っている』)。

 そして、石油資源開発(JAPEX)、中国電力、INPEX(旧国際石油開発帝石)、電源開発(J-POWER)、北陸電力、北海道電力、出光興産、ENEOSホールディングスなどの日本企業が、「脱炭素事業戦略」が遅れていることを理由として、ダイベストメントされる事例が増えている。いまだに、石炭火力発電所を多く運用しているからだ。

 加えて、日本は「再生可能エネルギー」への取り組みが遅れている。それは、安倍政権以降、東日本大震災によって国内の全基が停止した原子力発電所の再稼働を最優先する方向でエネルギー政策を進めてきたからである。

岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由、何が足りない?本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されています。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 一方、海外では、ただでさえ強大な力を持っていた「石油メジャー」が再生可能エネルギーに取り組み、「総合エネルギー企業」とでも呼ぶべき企業体への変貌を遂げている。

 例えば英BPは、再生可能エネルギーの発電所などを中心とした脱炭素関連事業の年間投資額を、30年までに現状の10倍となる約50億ドル(約5300億円)に拡大する計画だ。水素やCCUS(二酸化炭素の貯蔵・利用)事業も手掛けながら、石油・天然ガスの生産量を削減し、30年までに二酸化炭素排出量を最大40%削減する方針である。

 日本のエネルギー企業がダイベストメントされる一方で、海外大手はさらに先に進もうとしているのだ。この差を埋めるにはどうすべきか、日本では官民連携でより深い議論を行うべきではないか。