経済“担当”の李克強は
「勝負の6月」をどう乗り切るのか
「6月が勝負。2022年の中国経済を軟着陸させるためには、6月が肝心だと李首相は考えている」
6月初旬、中国国務院でマクロ経済政策の策定に関わる局長級幹部が筆者にこう伝えた。「李首相」(筆者注:同幹部は「李総理」と表現。中国語では「国務院総理」という呼称が一般的)とは、言うまでもなく李克強(以下敬称略)を指している。
今年3月に行われた全国人民代表大会(全人代)閉幕後の記者会見で、李克強は、2022年が国務院総理としての最後の1年になることを公言した。そんな最後の1年、ウクライナ危機やゼロコロナ政策などに翻弄(ほんろう)される中、李克強は自らの“担当”分野である経済の安定と成長を確保するために奔走しているように見受けられる。
“担当”とあえて強調したのは、過去の10年、国家主席、総書記、軍事委員会主席である習近平(以下敬称略)と比べて、李克強に付与された権力、権限には制限があり、国務院総理として担当する経済の分野ですら、習近平に凌駕されているとやゆされてきたからである。
例えば、マクロ政策の決定などで超法規的な権限を持つとみなされてきた「中央全面深化改革領導小組」(筆者注:2013年11月に開かれた18期三中全会で設置が提案され、2014年1月22日に第1回会議開催)では習近平が組長を務め、李克強は副組長の立場だった。実際に、この期間、「経済政策も習近平が決めている」「習近平は細かい経済政策にも口を出している」といった“うわさ”は後を絶たなかった。