無重力で遊んでいるような面白さ

藤本 実際にSF思考、特に小説のプロットを作るワークショップに参加してみていかがでしたか。

中島 めちゃくちゃ楽しかったです! 最初は戸惑いもありました。というのも、投げ掛けられる問いがぶっ飛んでいるし、どこまで妄想を広げていいのか、あんばいが分からなかったので。でも、やっているうちにどんどん楽しくなって……。

藤本 特にどのあたりが楽しかったですか。

中島 「行ったり来たりする感覚」かな? SF思考といっても、自分の専門分野の話題なら「いつもの自分」のままで議論できるんです。でも、知らない分野の話題になると、肩書や経歴のよろいを外した「生身の自分」で考えなくちゃいけない。で、気が着くと、慣れ親しんだ「いつもの自分」と、えたいの知れない「生身の自分」を行ったり来たり……。これが癖になるんですよ。思考がフワ〜ッと遠くに行ったり、足元にヒュッと戻ってきたり、無重力空間にいるみたいで面白くて。

SF思考で共創する、手触りのある未来――農林水産省フードテック官民協議会「2050年の食卓の姿」ビジョン作りの事例から中島美樹氏(ポッカサッポロフード&ビバレッジ) Photo by ASAMI MAKURA

藤本 それは、普段の会議では味わえない感覚ですね。

中島 その感覚が、ディスカッションするとさらに増幅するんです。全員がギュッと同じところに集まったかと思うと、次の瞬間、遠くにパッと散らばる。他の参加者もそれぞれ何かの専門家だし、それ以外では素人なので、それぞれの深い部分と浅い部分が重なったり離れたりして、ダイナミックに議論が動く。仮想世界で思考バトルをしてるみたいでした。

葦津 「小説を作る」ことのワクワク感もありましたよね。フードテックに直接関係のない仕事をしている人も、忙しいスケジュールをかき分けて熱意を持って参加してくれて、「創作の力だな」と思いました。

中島 ワークショップは全部オンライン開催だったので、ハワイでワーケーション中という方もいらっしゃいましたよね。チャットにも面白いコメントが集まって盛り上がるんです。オンラインでここまでできるんだ!と感動しました。