NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。

いま世界で起こっている、工芸による「新しいルネッサンス」とは?Photo: Adobe Stock

世界のトップアーティスト、科学者やプログラマーなどが、
工芸の分野と積極的にコラボレーションを進めている

 いま世界では、工芸による「新しいルネッサンス」が起こっています。

 本連載でご紹介したように、世界的なブランドの企業グループがヴェネチアで工芸をテーマにした巨大イベントを立ち上げたり、日本を代表する家電メーカーが工芸に新しい時代のものづくりのヒントを求めたり、現代アートのトップアーティストや、科学者やプログラマーさえ、工芸の分野とどんどんコラボレーションを進めていたりします。

 ご存じのように元々「ルネッサンス」と言えば、一四世紀イタリアで始まり、その後ヨーロッパ全体に広まった文化運動のことです。

 神を中心とした中世の世界観から大きく転換し、古代ギリシャやローマの文化を理想としながら、人間を中心とした新しい時代の世界観を立ち上げました。

 さらに近代へと時代が下り、ルネッサンスの人間中心主義が発展し、一八世紀からはイギリスを中心に、ヨーロッパで産業革命が起きます。産業革命は、機械による、人間の身体の拡張です。

 そして二〇世紀末には、コンピュータとインターネットによる情報革命が起こりました。アナログをデジタルに置き換えることで、身体や場所の制限がなくなっていく。これもまた脳の拡張という意味で、人間の身体の拡張です。