うまくコミュニケーションできないことからくる孤独感、低い自己肯定感、SNSによる誹謗中傷やバッシングなど、今、生きづらさをかかえる人が増えています。そんな中にあって、毎日を心安らかに、快適に過ごしていくためには、どうすればいいのでしょうか? 発達障害(ADHD)、うつ病など、生きづらさを抱えながらも精神科医として活躍するバク先生は、ツイッターでのつぶやきが共感・絶賛され、今、人気急上昇中。そんなバク先生の初の著書『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)の中から、生きづらさを解消するための実践的なヒントをご紹介してきた本連載。今回からは、読者の方からのお悩み相談に対して、バク先生からのアドバイスをお届けします。

【精神科医からのアドバイス】人間関係をつくることが苦手ですが、どうしたらいいですか?Photo: Adobe Stock

昔から人間関係をうまくつくることが苦手です…

 皆様、こんにちは。バク@精神科医です。

 この世の中には色々な悩みがあると思います。ただ見方を変えたり、色々な目線を持つことで「そこまで悩まなくても良かったな?」と思えるようになるかもしれません。

 本連載が、皆様のストレスをなるべく減らして、少しでも笑顔で生活するためのヒントになれば幸いです。では、今日の質問です。

【質問】昔から人間関係をうまくつくることが苦手です。人前で話しをしたり、相手の目を見て会話したりするのも苦手なのですが、これは自己肯定感が高まったり、心の持ち方が変わると、改善されるものでしょうか? 

人間関係がうまくつくれなくても、
人前で話すのが苦手でも問題ない

 これは、かなりよく聞く悩みですが、そもそも「人間関係をうまくつくれている状態」とはどんな状態なのでしょうか?

 自分の所属しているグループ(会社や学校など)で誰とでも気さくに話せる人は、良い人間関係がつくれている人なのでしょうか?

 例えば、ちょっとイヤな話ですが、カフェなどで皆と仲良く話をしていた人がトイレに立った後に、その人の悪口を言っている集団を見かけることがあります。でも悪口を言われている当の本人は、多分そんなこととは全く知らずに「自分は人間関係がうまくつくれている!」と思っているのではないでしょうか。

 そもそも他人の心や考えなんて誰だって読めませんし、だからこそ人間関係をうまくつくることはむずかしいと私も思っています。人前で話しをしたり、相手の目を見て会話をするのも嫌で苦手です。

 でも、仕事で必要な程度には親しい感じであいさつはしますし、会話もします。

 仮に相手からあいさつを無視されても気にしません。きっと相手も色々思うところがあるのでしょう。仕事に支障が出なければ、それでOKだと思っています。

 私たちは別に芸人ではないので(芸人の方が読まれていたらすみません!)人前で上手に話せなくても用事がこなせればいいですし、営業で商品説明をするときに困る!という場合には、場数を踏み続けて慣れるしかありません。

 それでも無理なら、人前で話さなくていい環境に自分を置くように努力したほうが、その努力は報われます。

自己肯定感は、高くなくても問題なし

 会話の際に、相手の目をガッツリと見ると、人によっては機嫌をそこねることもあります。ですので、私が会話で相手を見る際には、大体眉間か鼻の辺りに目を合わせているフリ(擬態)をしています。

 自己肯定感という言葉は昨今よく聞きますが、自分を極端に卑下しなければ、それで十分だと思います(むしろ「自分は最高!」といつも思っている場合は、精神科医目線では躁状態に見えます。つまりそれはそれでちょっと心配です)。

 自分の想定している理想が高すぎると、必要以上にうまくやろうとしてしまいがちですが、困らない程度に人と話せているだけで問題はありません(悪口は聞こえないところで言ってくれているならむしろ感謝)。

 人前でうまいことを言おうとすればするほど、噛んだり滑ったりするものです。しゃべりのプロではないんだし、伝えたいことだけ伝えられれば問題ない! という気持ちを持てれば、かなりマシな気持ちになれるのではないでしょうか。

 繰り返しになりますが、私は人と話すのが苦手だし、嫌いなので休日は家から一歩も出たくありません。

 でも気にしていませんし、改めないといけないとも思っていませんが、今日も一日無事に生きています。「うまくやろう!」と力を入れすぎるとしんどくなるばかりですから、「ゆるゆる適当に生きる!」という方向に努力を切り替えてはどうでしょうか。

 良いんじゃないですかね、それで。では、また次回に。

バク@精神科医
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく、行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーの道を志し文系に進学する。しかし「カウンセラーで食っていけるのはごく一部」という現実を知り、一念発起し、医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら、勉学とバイトにいそしみやっとのことで卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を専攻したが、医師研修中に父親が亡くなる喪失体験もあり、さまざまなことに対して自信を失う。医師を続けることを諦めかけるが、先輩の精神科主治医と出会うことで、精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にてさまざまな分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は、双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者が多い急性期精神科病棟の勤務医。「よりわかりやすく、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。個人クリニック開業に向け奮闘中。うつ病を経験し、ADHDの医師としてTwitter(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Twitterフォロワー6.5万人。『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』が初の著書。