プレゼンはむしろ評価者の能力を
あらわにする

 以上、代表的なものを挙げてみたが、本来、管理職たるもの、これらのすべての軸を念頭におき、視点を自在に行き来しながら、プレゼンを聞き、判断し、質問し、評価しなくてはならない。現在のところ、残念ながら、ほとんどの管理職が「提案の内容」⇔「今の時点のニーズ」の世界に生きており、その領域での完全性を求める。その結果、必要以上にきれいな(見た目の)プレゼンを強いられ、そのために莫大な時間が費やされているのだ。さらに困ったことは、一度も指導を受けたことがないからとはいえ(指導を受けなくてもそのくらいは自覚してほしいものだが)、「提案の内容」⇔「今の時点のニーズ」世界から、一歩外に出て考えなければならないという意識すらない人が圧倒的である。

 けだし、評価とはつくづく恐ろしいものである。提案をする人はそれなりに考えて提案しているので、そこにはそれなりの価値がある。評価者はその価値を発見して上手に使うべきなのだ。間違っても「今使えるか、使えないか」のみの視点から、「良かった、悪かった」という二元論で全く議論が発展しないようなコメントをすべきではない。

 よって、もしプレゼンに際して、提案者とは別に司会者を立てることができるのであれば、司会者は評価者に対して、以下のようなことを尋ねることを習慣化すると良いと思う。

・この提案は、どの点を改善すれば使えるようになりますか?
・この提案の内容に基づいて、われわれの基本的な存在価値そのものを問い直すようなことはありますか?
・時間軸を長めにとって考えたら、どうなりますか?
・他部署で使えるようなことはありませんか?
・提案の中で、素材として使える要素はありませんか?

 評価する者がまともで(かつ提案がそれなり以上)あれば、上記のような質問に対してちゃんと中身のある返答をしてくれるだろう。まともに答えられないようであれば、評価する能力がない人であり、評価者の立場にいて良い人ではない(すなわち要職から外すべきなのだ)。もちろん評価者ではない現場の人も、自分が良いプレゼンをするために、このような評価軸を持って常に考えるトレーニングをしておくことは重要だろう。

 いずれにせよ、近視眼的でとんちんかんな評価しかできない人が重要なポジションを占めている限り、真面目に提案しようと思う人はどんどん少なくなり、見た目が整ったパワポだけが量産され続けることになるだろう。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)