限られた時間や気持ちは
本当に付き合いたい人のみと共有したい

田原総一朗氏と鈴木なりさ氏田原総一朗氏と鈴木なりさ氏 Photo by HK

 4月22日に開催された第3回のテーマは、「人と出会うこと、つながること」。

 ゲストに、吉祥寺(東京都・武蔵野市)で「喫茶おおねこ」を営む鈴木なりさ氏(24)を迎え、約20人の若い参加者たちと、コロナ禍で様変わりした「人と会うこと」のあり方や意味を話し合った。

 鈴木氏は、国際基督教大学在学中より喫茶店を開始。現在は別の喫茶店に勤務しながら、週に一度、6時間のみ「喫茶おおねこ」を開く。そこでは、喫茶店というプラットフォームを通して、お客さん同士のつながりを提供する。営業終了後に、政治やジェンダーなど社会問題を扱った対話の時間を設けることもある。

 田原氏が「僕は本音と建前を使い分ける器用さがない。本音で語り合うことでお互いに理解し合い、信用し合えることができる」と信条を話すと、「私も、本音で言うことをすごく大事にしている。お客さんに対しても自身の意見をはっきり言うことで、『ここだったら気兼ねなくいられるかもしれない』と思ってもらえるかもしれない」と鈴木氏。

「もちろん、相手の意見もしっかりと聞くようにしている。世の中には数多くの喫茶店があるし、お客さんにとって、合う合わないは当然あると思う。でも、お互いが本音で話せるように風通しを良くすることで、来てくれる人に、ほかにはない『安心』を提供できるのではないかと思う」(鈴木氏)

 そこから参加者を交えた対話は活発化する。

「本音で話すことは大事だと思うが、あまり話しすぎてもよくない気がする。『本音で話していい』が前提の場所がもっとあるといい」

「その気になればいくらでも人と出会える世の中で、限られた時間や気持ちを、出会う人全員に使っていたら疲れてしまう。本当に付き合いたい人たちと、(時間や気持ちを)共有したい」

「私は、一度始めたことを辞めることが苦手。そのため、一度、付き合った人ときちんと別れることができない。うやむやにして、そのままフェードアウトしてしまうことがよくある。なので、人との付き合い方ってどうしたらいいのだろうと、常に考えている」

 そして、参加者の1人から「たとえば戦争が起こったとき、みんなが(戦争へと)向かって行っている中、1人で逃げる人はいないんじゃないかな。特に日本人は。つながりすぎると弊害もある。だから、(自分1人で考えられるような)孤独も大事だと思う」という意見が出ると、田原氏は次のように述べた。

「『意見が違うこと』、つまり『分断があること』というのは実は重要だ。フランス革命は、何のために行われたか。自由と平等だ。しかし、この2つは大矛盾している。平等であるためには競争はできない。競争すると貧富の差が出てくるためだ。しかし、自由というのは競争の自由でもある。アメリカは二大政党制だが、自由競争を掲げる共和党が政権を取ると、格差が広がる。民主党は競争に規制を設け、社会保障を手厚くするが、経済は低迷する。自由と平等が交互に来ている。イギリスも同じだ。しかし日本は二大政党制でもないし、野党は何をしたいのかわからない。良くも悪くも分断がないため、政治に緊張感が生まれない」