他者の価値を認めることで
自分の価値を自然に認められるようになる

「本当にその通りだと思う。『みんな存在価値があるじゃん』と自分が思って、行動して、初めて『自分も同じように存在価値があるんだ』と思えるようになる。生きているだけで価値があると本気で思うことができるようになり、心がだいぶラクになる。僕は自己肯定感が超高いと思っている。それは、おばあちゃんがすごく僕を愛してくれたから。何をしても『ばあちゃんが愛してくれている』と思うことができたからこそ、自分の存在価値を実感することができた。だから、自分の大切な人の価値を認めて行動することで、『自分にも価値がある』と自然に思えるようになるのではないだろうか」

坂根氏と影山氏Photo by HK

 坂根氏と影山氏が次のように締めくくってこの日のイベントは終了した。

「役割を求めて生きている人は多い。ついその場その場で役割を探そうとしてしまう。でも、私が3年前にせつこさんのスナックで働き始めたときは、マニュアルも制服もない。『あなたが好きな服を着て、あなたが思うようにやりなさい』と。それが自分にとっての充足につながっていたし、すごく救われたなと、今あらためて思う。ありたい役割や、企業や社会が求める役割も大事と思うけれど、『私』の延長に自然と役割が生まれてくること、そしてそのようなコミュニティがあるということは、とても大事なんだなと、あらためて思った」(坂根氏)

「自分の不安感とか迷いは、自分1人で答えが出せるようなものではないと思う。やっぱり他者が必要。田原さんが、この『ぷらんたん』のクラファンのときに、オンラインの時代だからこそ対面で話し合うことが大事であり、喫茶店で何時間も話し合った体験が貴重であったというメッセージを寄せていらっしゃったが、本当にその通りだと思う。やはり対面で対話を重ねていく。他者との対話の中から、自分自身も見つかっていくこともあるのではないかと思う。だから、何かあったらとりあえずカフェにおいでよと、皆さんに伝えたいですね(笑)」(影山氏)

ぷらんたん店主喫茶店「ぷらんたん」代表の前田夫妻 Photo by HK

 田原カフェでは、言語化に長けている人や発信が上手な人以外でも、「人に伝えてもいいんだ」「伝えるべきなんだ」と参加者たちに思わせる何かがある。

 冒頭の2つのルールに加え、30代以下限定で近い世代であり、参加人数も20人前後という規模感、そして、昔ながらの喫茶店という空間が、参加者の安心感を誘発するのだろう。

 多くの参加者が、言葉に詰まったり、どう言語化すべきか迷ったり、何を言いたかったか途中で忘れてしまったりしながらも、何とか言葉に出そうとする。思っていることを自然と共有したくなる。

 一方で、世の中には、伝えたくても伝えられない人は大勢いる。今必要なのは「対話」と「共有」であり、喫茶店には、そのような場づくりのヒントと可能性に満ちているようだ。

 後日、田原総一朗氏にあらためて話を聞いた。