マクドナルド「1100通りメニュー」が失敗で、デアゴスティーニ格安創刊号が成功する理由Photo:PIXTA

人間は誰しも“非合理的”な行動をしてしまうもの。そんな人々の心理的な特徴に注目した「行動経済学」の理論は、ビジネスでもさまざまな面で活用されています。「マンガの試し読みが3巻まで」になっていることや、「マクドナルドの1000種類以上から選べるキャンペーンが失敗した理由」は、行動経済学の観点から説明できるのです。(ネットストラテジー代表取締役 平野敦士カール)

ビジネスにも役立つ!
「行動経済学」とは

 皆さんもダイエット中なのにラーメンを食べてしまう、セール品だと不要なものまで買ってしまう、時間がないのに行列店に並びたくなる、貯金しなくてはいけないけど趣味にお金を使ってしまう……など“非合理的”な行動をしてしまった経験があるのではないでしょうか?

 伝統的な経済学では、「人間は常に合理的に、自分の利益に向かって行動するもの」といった考えのもとで構築されています。ムダな行いはせず、感情が揺れ動くこともなく、迷いも悩みもないといった「ホモ・エコノミクス(合理的な経済人)」を想定しているのです。

 一方、心理学では、利益がないのについやってしまう気持ちや、他人に左右されてしまう行動、喜びや悲しみ、悩みや迷いなどを理論的に検証します。そんな伝統的な経済学に、心理学をプラスして生まれたのが、「行動経済学」です。

 心理学者のダニエル・カーネマンが2002年にノーベル経済学賞を受賞したことで、行動経済学は一躍注目されました。その後も、行動経済学を論じる学者たちが次々とノーベル経済学賞を受賞しています。

 カーネマンと同じく心理学者である故エイモス・トベルスキーは、合理的に行動することができない人の心を、心理学を用いて分析しました。世の中は常に不確実なものであり、人はどのように未来を予測し、どのように行動するのかを論じたのです。これによって、伝統的な経済学ではアノマリー(例外)とされてきた事象について説明ができるようになりました。

 行動経済学は、ビジネスにも役立ちます。人間の“非合理的”な行動も、うまく活用すればプラスにつながる可能性があるのです。次ページ以降では、うまくいったビジネス、あるいはうまくいかなかったビジネスの事例について、行動経済学の観点から解説していきたいと思います。