「減価償却」という魔法を使える大家業は、現代の錬金術
まずは税金ですが、開業届などを出すだけでさまざまな節税メリットを受けられるので、持ち出しは発生しません。勤め先に通知されることもないのでご安心ください。
たとえば、4人家族の外食代は平均20万円/年ですが、外食の際にランチミーティングを行なえば、外食代を会議費として落とせます。パソコン・スマホ・通信費などの支出も、副業まわりに転用すれば、経費化できます。さらに、青色申告の届け出をすれば、10万円の青色申告控除が受けられます。そのうえ大家業では、減価償却費という魔法の経費まで使えるようになるのです。
先ほどのモデルケースで見てみましょう。近隣相場が30万円/月なので、年間360万円の収入を得られる計算でした。しかも、上手に節税すれば、この360万円には税金がかかりません。なぜなら税金は、所得(儲けた金額)にしか、かからないからです。所得とは「収入-経費」ですので、収入と同じ360万円の経費が発生していれば所得は0円となり、税金はかからないのです。
特に大家業の場合には、この程度の収入であれば、税金がかからないケースのほうが圧倒的に多い。大家業では、お金が出ていかないのに経費とみなされる「減価償却費」という魔法の経費を使えるからです。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、減価償却の仕組みは簡単です。建物は少しずつ劣化するので毎年価値が減ります(減価償却)。たとえば、木造住宅であれば、年4.6%の償却率で減価償却します。モデルケースの建物の未償却残高は3380万円なので、毎年155万円を減価償却できる計算です。10万円の青色申告控除と合わせると、合計で165万円が経費になる。この165万円は「みなし経費」なので、実際にはお金は1円も出ていきません。
それだけではありません。新しく借りた自宅を事務所兼用にすることで、最大5割程度までを経費化することも可能です(家事按分)。仮に水道光熱費プラス家賃240万円の合計額のうち120万円を経費計上できれば、経費の合計額は285万円ですから、残りはあと75万円です。75万円程度であれば、元々かかっていた住宅ローンの支払い利息や固定資産税、外食代、パソコン・スマホ・通信費、旅費交通費などを足しあげれば、軽くオーバーするでしょう。つまり、儲けが0円以下となり、税金がかからないのです。
その一方で、不思議なことに、手元にはお金がまるまる残ります。所得の計算方法とキャッシュフローの計算方法がずれている結果として、このような嬉しい現象が起きるのです。
建物の劣化に伴って、今後も屋根・外壁や水回りなどの補修費用がかかりますが、これらの費用もすべて経費化できます。自宅として自分が住んでいるときには経費化できなかったのに、人様に貸した途端に経費化できて節税できる点が大家業の醍醐味です。
だから、ひとたび大家になると、やみつきになります。修繕費・交際費・会議費など、あらゆる出費が経費化できて、しかも、家賃が毎月自動的に振り込まれるからです。この快感は、経験者にしかわからないかもしれません。もし、大家業が自分の肌に合うと感じたなら、無理せずに時間をかけて規模を拡大しましょう。