含み益と含み損の株、先に売るべきはどっち?

――特に初心者は自分が買った銘柄が下がってくると動揺して、どうしていいかわからなくなるのですが、それについて何かアドバイスはありますか?

窪田:誰もがそうなんですけど、「この株は上がる」と思うから買いますよね。だから当然、株を買う時に「この株は下がる」とは考えていないんですよ。

 でも、実際には下がることはある。特にトレードに慣れていない人が「下落した時に、どうするか」を全然考えていないと、大きな損失につながります。

 たとえば、「株価1000円」の2つの異なる銘柄を買ったとしましょう。買ってしばらくすると、銘柄Aは900円にズドンと下がって、銘柄Bは1100円にビュンと上がりました。

 そんな時、現金が必要になって、どちらかを売らなければいけない。さて、あなたならどちらを売るでしょうか。

 こんなケースの場合、多くの個人投資家は1100円になった銘柄Bを売って、銘柄Aを残すんです。そうやって利益を確定させようとするんですね。

 でも、本当に大事なのは「良い株を残すこと」。銘柄Aを売って損切りすることが必要なんです。株の基本は「悪い銘柄を手放して、良い銘柄を残す」ですから。

 たとえば、この銘柄AとBのチャートを別々に見て「Aの銘柄を買いますか」「Bの銘柄を買いますか」とクイズにしたら、ほとんどの人が簡単に正解を出します。

 しかし、実際に自分が銘柄を持っているとその判断ができなくなる。そこが難しいところです。

 900円に下がった銘柄Aを売った後、さらに下がれば、それは「良い負け」ですし、その後「買いのシグナル」が出れば、また買えばいい話です。

――上がった時、下がった時の状況も想定して考えておくことは本当に大事ですね。

窪田:それは間違いないですね。これは初心者に限りませんが、個人投資家でなかなか稼げていない人は「利食いが早く、損切りが遅い」のではないでしょうか。トレードの達人は、反対に「利食いが遅く、損切りが早い」ですから。

株を始めたばかりの人に共通する「危険な心理」

含み益の株ほど、売ってはいけない

――「損切りが遅い」のが問題なのはわかりましたが、利食いが早いのはどのような問題があるんでしょうか?

窪田:「利食いが早い」ということは、言い換えると、大きな上昇トレンドが来ていても、すぐに売ってしまっているわけです。

 そもそも相場を大きく分けると「ボックス相場」と「上昇トレンド相場」「下落トレンド相場」の3種類しかありません。

 ボックス相場とは、ちょっと上がったらまた下がる。下がったと思ったら、また上がる。一定の値幅の中で、上がったり下がったりする相場です。

 一方「上昇トレンド相場」とは、上がったり下がったりを繰り返しながらも、大局的には上がり続けていく相場です。移動平均線は上向きです。その反対が「下落トレンド相場」です。

 利食いが早い人は上昇トレンドの銘柄を買っても、すぐに売って、利益を確定させてしまいます。ボックス相場でそれをやっている分にはいいんですけど、上昇トレンドでそれをやると、大きく勝つことができません。

 株の世界では10倍になった銘柄を「テンバガー」と言いますが、テンバガーの銘柄を買ったことがある人はかなり多いと思います。しかし、実際にテンバガーまで持ちきった人はなかなかいない。それが実情なんです。

 株で大事なのは、損は早く切って、儲けは長くのばすこと。「何回勝った、何回負けた」は関係ありません。

 初心者の人は特に「実現損益」ばかりが気になって、「勝つ回数」を求めてしまうかもしれません。

 しかし、大事なのは「勝つ回数」よりも、どれだけ大きく勝てるかです。ポートフォリオに含み益の株を残して、資産を大きくしていくことが重要です。