女性こそ「長生きリスク」に
気をつけるべき

 現時点でも平均寿命は女性の方が長く、87歳を超えている。その上、寿命中位数(その年に生まれた人の半分が生存している年齢)で女性は既に90歳となっている。つまり、今でも2人に1人は90歳まで長生きするのである。

 今後も医療技術の進歩によって平均寿命は伸長することが容易に想像できる。したがって、自分が考えている以上に長生きすることでお金が足りなくなるという「長生きリスク」は女性の方が大きい。まだ現役の時からできるだけ稼いでお金を準備しておくということも大切だが、長く働き、そしてできるだけ収入を増やすことで将来の年金額を増やすことはとても重要なことだろう。

 最近は「年金の受給を繰り下げることで生涯にわたる受給額を増やす方が良い」ということがよく言われるようになってきた。これはむしろ、女性に当てはまることと言っても良いだろう。

 中には夫の年金は通常の65歳から受給を開始し、妻の年金は繰り下げるという人も増えてきているようだ。特に2022年4月からは、繰り下げ時期を75歳まで伸ばすことができるようになった。もし75歳まで繰り下げた場合、年金受給額は84%増えることになる。長生きする女性だからこそ、受給を繰り下げることを真剣に考えるのが良いだろう。

「○万円の壁」というのは、要するに“朝三暮四”の発想なのだ。今、得になるのなら将来はどうでも良いということであればともかく、少なくともまだ現役で収入がある時期に負担をしておくことで、将来働けなくなったときの給付を多くしておく方が安心できるはずだ。

 もちろん法律や税制は今後も変わっていくだろうが働いたという事実は確実に残っていく。つまり報酬という形や年金受給額という形で必ず見返りを得ることができるのだ。確実に今の収入(給料)と将来の収入(年金)を増やすことができるのであれば、目先の税や社会保険のことばかり気にするのではなく、躊躇せず積極的に働いて可能な限り報酬を増やすことを考えるべきではないだろうか。

(大江英樹)