米韓企業が必要とするホンダの製造技術

 ただし、GMのEVシフトは想定通りに進んでいない。特に、LGグループ製バッテリーを搭載したGMの「シボレーボルトEV」の発火問題が相次ぎ、複数回にわたってリコールが実施された。現時点で発火の原因は根本解決に至っていないようだ。

 米国を代表する自動車メーカーであるGMとしては、安全保障上の同盟国である韓国のLGグループとの関係は手放せないだろう。LGグループは、韓国の現代自動車や米フォード、独フォルクスワーゲンにも車載用バッテリーを供給している。発火問題の解決に時間がかかれば、車載電池の世界最大手である中国の寧徳時代新能源科技(CATL)とのシェア格差は拡大する可能性が高い。

 発火問題は、LGグループ内にバッテリーを構成する素材・部材などを精緻にすり合わせ、耐久性と安全性を高める技術が不足していることを示唆する。それは、米国企業のバッテリー調達にネガティブなインパクトだ。基礎的かつEVの安全性向上に決定的に重要な製造技術を獲得するために、GMはLGグループにホンダとの提携強化を求めたとみられる。

 見方を変えれば、長い時間をかけて磨かれてきたホンダの自動車製造技術は、エンジン車以外にも応用できる部分が多いといえる。ホンダは二輪車の製造からスタートし、小型エンジン車、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、EVなど多様なモビリティーを生み出した。さらには小型ジェット機である「ホンダジェット」で培った航空機の設計開発や製造のノウハウもある。

 そうした技術を取り込むことで、GMと LGグループは世界に必要とされるEVの供給体制強化を目指しているはずだ。ホンダにとってもGMとLGグループとの協業強化は、バッテリー調達体制を強化して脱エンジン車を前倒しで実現し、より快適な移動を可能にする電動技術の創出に集中するために欠かせない。

 ホンダとGMが車台(プラットフォーム)を共通化できれば、事業運営の効率性は一段と高まる。ホンダ(日)、GM(米)、 LG(韓)はアライアンスのさらなる強化によって相互の弱みを補完し、ウィン・ウィン・ウィンの関係を目指していると考えられる。